超時空メルヘン「ババジ君」第17話
第16話の続きです。
キツイ日差しの中から急に暗いところに閉じ込められたので、最初は自分の周りさえよく見えなかったババジ君ですが、ようやく目が慣れてきました。
ババジ君がいるところは、想像以上に広いところでした。
周りには、ヘンな乗り物のようなものがたくさん置いてあります。
足元を見ると、紐のようなものが束ねられて、部屋の隅から隅まで細かく張り巡らされています。
「よし、この紐をムチにしよう。」
ババジ君は足元の細長い紐の何本かを引きちぎり、自分の身長の2倍ぐらいの長さに整えました。簡単なムチの完成です。
ババジ君は試しに床をムチで叩いてみました。
ピシャッと心地よい音が壁じゅうに反響しました。
にんまりと笑ったババジ君は、奥にあるドアへと向かいました。
恐らくこのドアが隣りの部屋と繋がっているのでしょう。
ババジ君がドアの前に立つと、なぜかドアが自然に横にスライドして開きました。
隣りの部屋へと踏み込んだババジ君、入った瞬間、「わっ」と声をあげてしまいました。
●
産土号の電算室の中、ユニワノイナホは部屋の奥の玉石が真っ赤になって点滅しているのを発見しました。もちろん種類にもよりますが、玉石が発する赤い色というのは、緊急・危険・非常事態など、あまり良いことを意味しません。
しかもその玉石は、毒々しい真っ赤な色で点滅しているのです。
ユニワノイナホはギョッとしました。
着陸の際には、危険な物体が存在しないことは何度も確認しましたし、ハッチも閉めました。それなのになぜ玉石は危険を告げるかのごとく赤く点滅しているのでしょう。
ユニワノイナホは赤く光る玉石に近づきました。見れば見るほど不安になってしまうような赤です。ユニワノイナホが手を出してその玉石に触れようとしたとたん、玉石は赤い点滅をやめ青白い色になってしまいました。
「なんだ故障か。最近は質の悪い極玉師が多いというからな。玉の配合具合を間違えたんじゃないのかな。」
ユニワノイナホは電算室を抜け、隣りの機械調整室へと向かいました。
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隊長は、爆発のあった地点へと近づいています。
確かに大爆発の後らしく、焦げくさい匂いが漂い始めてきています。
まだ火の消えていない数軒の建物からは煙が出ており、その火を消そうと躍起になっている人達がせわしなくポンプ・リレーをしています。
「あれれ、デブヒゲさんじゃないですか?」
隊長の後ろから声が聞こえました。
「デブヒゲさんですよね。」
デブヒゲさん?どうやらこの声は隊長に向けられているようです。
隊長は振り向きました。
ツルツルの頭に白いヒゲ、痩せ細ったアバラがのぞく胸元を隠すように一枚の粗末な布をまとった男が立っていました。
「ああ、やっぱりデブヒゲさんだ。どうしたんですか、こんな格好をして。」
デブヒゲさんて誰だ?
隊長の頭の中に様々な思考がよぎる間もなく、男は、
「いやぁ、無事でよかった、よかった、さぁ、行きましょう、行きましょう。」
と隊長の手を引っ張りました。
つづく
⇒第18話
画:赤っぴ
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