ホストの仕事は「職業、イケメン」ではない!
ホストの結婚二次会
昔、椎名林檎のコピーバンドをやっていた頃、練習が終わった後にバンドのメンバーと打ち上げによく行く店がありました。
アジア料理中心の店なのですが、ここの店長は若いのに、とてもシッカリしている。
腰が低く人当たりも良い。しかも、マメでイケメンだったんですよ。
だから、ある日、冗談半分に「ホストに向いているんじゃない?」と言ったら、ほどなくして、彼は本当にホストになっちゃった。
そして、しばらくしたら結婚することになり、結婚二次会に招待もされました。
当然、結婚二次会には職場の仲間たち、つまりホストたちが大勢かけつけるわけです。
そうすると、なんというんでしょうかね、通常の結婚式の二次会とは明らかにノリが違うのです。
「飲め、飲め!一気、一気!」的な、とにかく酒、酒、酒な雰囲気は、体育会的なノリに近いのでしょうが、さらにそれに輪をかけているというか。
誰かが何か言葉を発するたびに、「うぇ~い!!」と周囲が大きな雄たけびのような追従をし、それにひっかけて、とにかく「話はその後、まずは飲もう、手に持つグラスを空にして!」みたいな内容で、リズミカルにはやし立てるのですね。
とにかく、飲ませ上手、というより、なんでもかんでも「酒を飲む」方向にホスト同士が連携を取りながら、陽気に大声を出しながら持っていくわけです。
そうすると、周囲の勢いに飲まれた人は酒を飲まざるをえない雰囲気に負け、「一気飲み」をするわけです。
そしたらそしたで、大喝采。
もちろん、相手に飲ますだけではなく、自分たちからも(特に下っ端っぽいホストは特に)積極的に飲むんですね。
そして、「コイツがこれだけ飲むのだから、あなたも飲んでね!」というムードを形成するわけです。
もちろん、一口にホストクラブのホストといっても、店のレベルや方針によっても様々なタイプがあるのでしょうが、少なくとも私が結婚二次会で目撃したホストたちの姿は、ドラマ『夜王』などに登場する高級なイメージではありませんでした。
ひたすら「客に飲ませ・自らも飲む」ことを生業とする若者たちのハジけた姿でした。
「最低条件、イケメン」
ところで、歌舞伎町や大久保などに足を運ぶと、「職業、イケメン!」いうキャチコピーの看板を目にします。
ホストクラブの宣伝(あるいはホスト募集?)のビルボードなのですが、このキャッチコピーを見て、「オレは色々な人にイケメンって言われているから、ホストになろうかな?」などとは安直に考えないほうが良いと思いますよ(そういう人、あんまりいないとは思いますが)。
たしかに、ホストは「ブサ男くん」には勤まりにくい業種ではありますが、だからといってイケメンだからといって仕事ができる(=売り上げに貢献できる)わけではないと思います。
イケメンであることは必要最低条件。
日本で仕事をするのであれば、最低限日本語が話せなければ話にならないというのと同じです。
コンビニや飲食店がアルバイト募集の広告に「職業ニホン語」と書くようなものです。
しかし、日本語が話せるからといって、すぐに「仕事ができる」につながるわけありませんよね。
ホストの仕事もそれと同じです。
ぶっちゃけ、ホストの世界は「酒飲み」と、厳しい上下関係は「体育会系」です。
ボトルが入ると、陽気に大騒ぎをしてお客を盛り上げ、一気などをしてお客を喜ばせなければなりません。
つまり、お客さんとのコミュニケーションも大事ですが、それと同等、いやそれ以上に肝臓で仕事をする(=酒を飲む)ことも大事な業務内容のひとつなのですね。
歌舞伎町の泥酔ホスト
客や先輩ホストからものすごく酒を飲まされるホストも少なくないでしょう。
深夜から朝にかけて営業している歌舞伎町にあるラーメン店の店員の話によると、朝4時頃にグデングデンに酔ったホストが店にやってきて、ラーメンを食べながら、うとうとしてラーメンのスープに顔をつっこんでしまうことがあったそうです。
それぐらいになるまで酔っぱらう。
そして疲れる。
食ってる途中のラーメンに顔を突っ込むほどに。
さすがにラーメンは熱いので、すぐに気が付いてラーメンを食べはじめますが、今度は吐き気を催して、しばらくトイレでゲロロンパ。
カウンターの座席に戻ってきたら、今度は睡魔に勝てず、眠りこけてしまい、カウンターからずり落ちて、カウンターの下で眠りこけてしまうのだそうです。
死にそうな顔で泥のように眠っているので、そのまま閉店時間まで座席で寝かせているようですが、このようなホストが、週に何人かは必ずいるそうです。
それぐらい、酒に弱い人は、酔いつぶれる、吐き、ダウンするというハードな世界なんです。
肝臓にも悪いですし、若い頃は良いけれども、年をとったら確実に寿命を縮めます。
ホスト街のある歌舞伎町に肝臓に良いとされるシジミラーメンの店が何軒かあるのもわかりますね。
このような仕事に自分が向いている、酒が強くてコミュニケーション・スキルが高く、さらにメンクイではなく若い女性から年輩の女性まで分け隔てなく接する自信がある人はホストの世界で一旗あげるのも良いと思います。
しかし、単に自分はイケメンだからだという理由だけで安直にホストを目指すのはどうかと思います。
芸能人やモデルもそうですが、その職に就くまでは、実際はどんな仕事をするのかを知らずに、「ルックスが良いということを職業的に認められたい」という願望(見栄)だけで、そのような浮き沈みの激しい世界に飛び込むことは安直だと言わざるをえません。
参考:「好きなことを仕事にするな」とは言わないけれど、よく考えて!
「イケメンだからホストになってみようかな?」と考えている人がいたら、そのあたりのこともよくよく考えてからホストクラブの門戸を叩くべきでしょう。
記:2017/06/01