リズムで闘う ドラマーおじさん vs.オレ(ベース弾き)
2018/01/14
先日、近所のバーの名物客とリズムバトルをしてきました。
とにかく、ものすごいアクションでドラムを叩く人です。
見ているだけでドラムセットを壊すんじゃないかと思うほどの、オーバーアクション。
実際、スティックもよく折るそうです。
じゃあ、リズムも滅茶苦茶なのかというと、全然そんなことはない。
彼の叩き出す、しなやかで包容力のあるビートは、どんな共演者も鼓舞してやまないエネルギー感に満ち溢れているのです。
なんでも、酔っ払って椅子から滑って床に寝っころがっても、シンバルやハットの刻みは正確さをキープするほどの人なのだそうで。
「すごいドラマーが店に来るんだよ」という、噂だけは聞いていました。
しかし、毎日この店に通って網を張っているにもかかわらず、中々その人、店に来ない。で、先日、会うことが出来ました。
ようやくべろんべろんに酔っ払って深夜、店にやってきた彼。
なんでもフィリピン・パブで飲んだ後だとか。
店の人からは「ハゲ」とか「オヤジ」と呼ばれているだけあって、パッと見は髪が薄くなってきた単なる50代オヤジのようですが、眼光の鋭さは見逃しませんでした。
彼の眼を見ていたら、菅下清廣さんを思い出しましたね。
先読みの達人、新興株のカリスマと呼ばれる投資家で、スガシタ・ファイナンシャル・サービスの代表も勤めている方です。
彼は非常に物腰柔らかな紳士ですが、目だけはいつも笑っていない。なにかを射るような鋭い目が印象的な人なのです。
その菅下さんにそっくりな鋭い目に、とんがった鷲っ鼻。
この人は只者ではないな、と直感的に感じました。
カウンターで酒を飲みながら、
「やれ理論だ譜面だ、音楽がイイとか悪いとかを偉そうにいう連中が多いけど、そんな奴らは音出してみろっての。俺は音しか信用しないぞ。」
とか、
「出す音に、その人間がどう生きてきたかが全て出るんだ。俺は音を聴けば、そいつはどんな人間かわかる」
などと話しています。
私も、そのとおりだと思って聞いていましたが、多少プレッシャーも感じました。
私のベースを聴いて、「お前は、つまんねぇ野郎だな!」と言われたらどうしよう、などと思ったからです。
しかし、それは杞憂でした。
もう、セッションは盛り上がりまくり。
たしかに、このオジサンのドラムは凄いです。
焚き付けられました。
弦をかきむしりました。
ドラムセットに向けて低音攻撃をしまくりました。
いやぁ、久々に燃えた燃えた。
こんな凄いドラマーは滅多にいない。
酔っ払いなスケベハゲオヤジだなんて、トンデモない。
猛烈なジャズドラマーですよ、このオジサンは。
ひととおり、音をぶつけ合ったあと、握手をし、「今日は君のベースに感じるものがあった。のせられてしまったよ、ハハハ」と言われました。
ノせたのはアナタのほうじゃないですか、ハハハハなんて言いながら、再びカウンターで酒を飲みはじめた我々。
一番好きなドラマーはエルヴィン・ジョーンズだと私が言ったら、強く抱きしめられ、「じつは、俺もなんだよ!」
その目には涙すら浮かんでいました。
急いで自宅に戻った私は、急いでコルトレーンの『インプレッションズ』、『トランジション』、『至上の愛』などを棚から取り出し、店でこれらのアルバムを大音量でかけながら、二人でいかにエルヴィンは素晴らしいかを語り合いました。
気が付くと、夜も白みはじめ、店に残っていた人たちと、全員が共通して演奏できる曲(《スタンドや《レット・イット・ビー》など)を2~3曲弾いて店は閉店となりました。
時計を見ると、朝の5時を回っていました。
たはは。
記:2006/03/06