ソリッド・ステイト・キャスタリア

      2021/02/02

2018年版リミックス

昨年2018年の11月末に、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』のリマスタリング版が発売されました。

それを契機に、いくつかの音楽雑誌ではYMO特集が組まれています。


レコード・コレクターズ 2019年 2月号


ROCK JET (ロックジェット) VOL.75 (シンコー・ミュージックMOOK)


Keyboard magazine (キーボード マガジン) 2019年1月号 WINTER (CD付) [雑誌]

重度のYMOマニアからしてみれば、目からウロコな新事実が掲載されている記事はなかったものの、『ロック・ジェット』の鮎川誠ロングインタビューは面白かったかな。

『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』といえば、私にとっては《キャスタリア》。

このアルバムが発売されたのは、私が小学生の時でした。
小学生の子どもらしく、最初、私は電子音やヴォコーダーを通した声が新鮮な《テクノポリス》や《ライディーン》にハマりました。

しかし、夢中になって何百回と聴いていると、次第に他の曲もじっくり聴こうという心の余裕も生まれてくるわけで、そのようなタイミングで、今まで何となくスルーをしていた《キャスタリア》にも耳が行くわけです。

《アブソリュート・エゴ・ダンス》や《ライディーン》のようなノリノリのナンバーに比べると、《キャスタリア》はなんて暗いんだろうと思ったいたものですが、じっくり聴くと、これはかなり深い世界だなと言うことに気が付きました。

そして細野さん作曲の《インソムニア》を除けば、どちらかと言うとポップでノリの良い曲が中心に収められているこのアルバムの中では、かなり独特な存在感を放つ極だということに気が付き、愛着も湧いてくる。

とても考え抜かれた構成、アレンジでありながらも、アタマの中のリクツだけで練り上げられただけではなく、その先にあるヤバい知性の暴力みたいなものもボンヤリですが感じたものです。

やがてその後に聴いた『B-2 unit』で、そのボンヤリが確信に変わるわけですが。

参考記事:B-2 unit/坂本龍一

これがきっかけで、他の教授作曲のナンバーに耳を傾けると、その多くの曲が独特なハーモニーに彩られているということがわかり、すさまじい勢いで教授が作り出す曲(の響き)の虜になっていきました。

坂本チルドレン

私と同世代の多くのYMO好きもそのようなものを感じていたに違いありません。

当時、坂本龍一がNHK・FMの「サウンドストリート」という番組でパーソナリティーを務めていた頃、何ヶ月かに1回の頻度で「デモテープ特集」と言う楽しい企画がありました。

視聴者から送られてきたカセットテープを教授(坂本龍一)と、当時の奥さんだったアッコちゃん(矢野顕子)がセレクトして、良いもの、面白いものを選び、それを番組で流すという特集なのですが、岡元清郎氏を始めとして、多くの若いアマチュアミュージシャンがデモテープに吹き込んだ曲は、坂本コード独特な響きを彷彿とさせる曲が多かったことからも、当時の多くの10代のアマチュア楽器弾きたちは、坂本龍一が紡ぎ出すコードの響きに影響受けていたということがわかります。

特に私は岡元清郎氏の《ジャポーネ》や《マーブル・ウォーター》が大好きで、年齢も1つか2つしか上ではない氏の抜群のセンスと演奏力に舌を巻きました。
また、当時は安いMTRでも10万円、ポリフォニック・シンセサイザーだったら、最低でも15万円はする時代に、充実した機材を駆使して音楽を創造している岡本氏の金持ちっぷり(?)を心底うらやましく思ったものです。

ちなみに、《ジャポーネ》や《マーブル・ウォーター》は、『デモテープ』に収録されています。

ジャズへの橋渡し

私が最初に自発的に聴いたジャズは、ビル・エヴァンスの『ポートレイト・イン・ジャズ』でした。

参考記事:ポートレイト・イン・ジャズ/ビル・エヴァンス

ビル・エヴァンスを何度も聴いていくうちに、次第に「うん、なんとなくこういう感じならジャズを好きになれそうかな?」と思えるようになった突破口は、ビル・エヴァンスが奏でるハーモニーの響きでした。

その後、セロニアス・モンクにもすぐにハマったのも、ハービー・ハンコックのピアノの響きが好きなのも、要するに私はハーモニー好き人間だからなのでしょう。

もちろん、教授が作り出すハーモニーと、ジャズ特有のハーモニーとはまったく響きの色合いは異なるのですが、ジャンルを問わず、私は、斬新なハーモニー、豊かなコクのあるハーモニー、エグ味のあるハーモニーなどなど、特徴のある響きにはピクンと反応する体質のようすね。

そして、その響きにピンとくるような体質を作ってくれたのが、おそらくは『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』に収録されている《キャスタリア》だったのかもしれません。

代表曲《テクノポリス》や《ライディーン》は良いけれども、《キャスタリア》は苦手だと言う人、出きればハーモニー面にも注目しながらキャスThaliaを聞いてみたいはいかがでしょうか?

以上と同内容のことを語った動画もアップしてみました。

やっぱり《キャスタリア》は良いですな♪

記:2019/02/08

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