ボスタング 六本木最後のライブ
2016/05/27
先日の夜は「ボスタング」のライブでした。
このバンドは、すべてが即興で、事前に打ち合わせは一切したことがありません。
ある人は演劇的だといい、ある人は滅茶苦茶だといい、ある人は、寺山修二のアングラ劇的だといいます。
しかし、我々はそういうこと、まったく意識したことがなく、たしかに、演劇的な展開を見せる日もあれば、滅茶苦茶で破綻しまくる日もあれば、寺山修二的なアングラな展開に発展することもありますが、それは、ほんと、その日の我々の気分次第なのです。
当初は、六本木の「バックステージ」で螢博士のヴォーカル&語りと、私のウッドベースでの小さな編成のこじんまりとした表現から出発し、かれこれ5年ぐらい細々とやっていたのですが、最近は、わが息子が加入して、いい意味でボスタングのグループカラーを掻き乱して書き換えてくれたことに加え、ドラマーもヘルプでついてくれることになったので、より、表現の内容が多彩になり、くわえて、よりいっそう混沌を極め、表現の方向性がまったく読めないユニットへと変貌している今日この頃です。
ハプニングを楽しむこと。
そして、その瞬間に起きる再現不能な出来事に立ち会うことが大好きな人にとってはタマラんバンドなはずなのですが、予定調和を好み、自分の頭の中で描いた「想定」から逸脱した現実に直面することに恐怖感を抱くような人からは忌み嫌われる可能性大な表現内容を持った危険なバンドでもあるのです。
さて、昨日のライブは「六本木バックステージ」における最後のライブとなりました。
なぜかというと、今月で「六本木バックステージ」は消滅してしまうのです。
我々のこのようなアホバカな表現形態を笑って許してくれたライブハウスが消えてなくなってしまうことは、非常に残念なのです。
しかし、だからといって、「これで最後!」という気負いは一切なく、いつもの調子でライブをやっていたら、結果的には、今までのボスタングのステージの中では、個人的にはベスト3に入る出来になったと思います。
昨日のメンバーは、私がベースとキーボード。
螢博士が、歌と踊りと語り。
うちの息子も、踊りと語り。
さらに、ドラムは博士の弟子が参加してくれました。
過去に2回のライブにおいては、「ジョニー&ザ・ガールズ・ネクスト・ドア」というインディーズのレディス・パンク・バンドのドラマーがヘルプで参加してくれていました。
彼女は、ものすごく勢いのあるドラムをたたく人で、余計なオカズは一切たたかないシンプルなドラムなのですが、そのぶん、メンバーを鼓舞し、うしろからメンバーの「気」をプッシュうすることに長けたバンドの推進力的存在。
だからこそ、私は「ジョニー&ザ・ガールズ・ネクスト・ドア」のライブを見たその日から、彼女にボスタングでドラムを叩いてもらえば、ボスタングに絶対新しい風が吹くだろうなと思い、ダメもとで出演交渉をしてみたら、二つ返事でOKが出たので、お言葉に甘えて叩いてもらうことに。
それで彼女に2度叩いてもらったライブは、それはそれで非常に勢いのある内容になったと思います。
しかし、今回のライブは、その彼女がバンドの練習のため参加出来ず。
かわりに、螢博士の弟子がドラムで参加してくれることになりました。
しかし、私、その人のドラムを一度も聴くことなく、いきなりステージの上で即興であわせることになったのですが、彼のドラミングはなかなかのものでした。
「ビートのないリズムを叩くのがすき」という彼なだけあって、いや、もちろん、それは彼なりの謙遜なのですが、ちゃんとビートはありましたし、しかし一本の直線上にゴールが見えるようなリズムではなく、非常に彼のたたき出すリズムは多義的なのですね。
ポリリズムではないのだけれども、彼が無意識に提示するリズムの中のどこの箇所に重点を置くかによって、そして、こちらが重点を置いたポイントをどう解釈してベースを弾くかによって、まったくリズムの様相が異なってくるという、ある意味、やればやるほど面白くなってきそうなドラミングでした。
そんな彼と私の作り出すリズムに乗って、螢博士と息子は阿呆馬鹿な即興芝居と語りと歌を始めます。
いままでは、螢博士が局面のイニシアチヴを握っていたのですが、どうも、息子が参加してからというものの、息子のほうが主役の座に収まってしまった感があります。
博士には悪いけれども、博士は、なんだか「立っているだけ」な瞬間が増えてきてしまい、観にきていた人からも、「なーんか、博士立っているだけが多くない?」などといわれていました。
ドリフでいえば、志村けんが新規加入した後の、加藤茶的な存在に近いのかも(笑)。
最前線で身体を張る役からは、一歩後退した状態というか。
それぐらい、うちの息子の悪乗りはすさまじく、完全に我々、いや会場全体を仕切っているので、わが子ながら、非常に恐ろしいです(笑)。
しかし、息子を最前線に立たせて好きなことをやらせつつも、後方から的確なフォローを行う螢博士にも私は「大人」を見た!
「バックステージ」は今月で閉店するのですが、息子の提案で「最後にみんなでマイクをまわして真面目な挨拶をしよう」ということになりました。
ボスタング一同、強引に息子にマイクを渡されて喋ることになったのですね。
私は適当にだらだらと喋ってしまいました。
博士の演説が面白かったのです。
しかし、最後にマイクを持った息子は、「え~、ボスタングのリーダーとして、一言申し上げたいと思います」なんて前置きしやがって、お前、いつのまにかリーダーかよ!(笑)です。
「ボスタングのリーダーとして、この店は楽しい! 面白かった! こういう店が無くなるってことは、淋しくなる。しかし、僕らの心はいつまでも…」
なんて長演説はじめやがって(笑)、こいつ、もしかしたら暴走族のリーダーや政治家にも向いているのか?なんて思ったりして。
ベタで簡単な言葉の中にも、なんだか人をひきつけるようなことを言うんですよね。堂々と。
さすが、自らリーダーを名乗り、30代のおっさん達を完全に掌握するだけのことはあるわい(笑)。なんて、わが息子ながら感心してしまったよ。
この気質を摘み取るような教育、シツケをするのや止めよう!と強く思ったしだいであります(というか実際、いまのところしてませんが)。
とにもかくにも、ボスタングを好意的に受け入れてくれた店が消滅してしまうため、あとは、ボスタングをやらせてくれる会場、ボスタングを笑って受け入れてくれる人々は、もう奄美大島しかありませんね(笑)。
最低年に1回はやりたいもんですな、なんてことを言いながら、午前3時まで飲んでました(笑)。
一番テンション高く、最後までお客さんを含め、残った5人の大人たちを仕切っていたのはやっぱり息子でした(笑)。
螢博士なんて、最初から最後まで息子のペースで振り回されっぱなしのような気がして、見ていてちょっと気の毒になってしまいました。
ゴメンね、博士。
しかし、家では猫をかぶったようにおとなしいんだけれどもなぁ。
どうも、大好きな螢博士たちに会うと、興奮してエラそうな振る舞いモードにチェンジしてしまうみたい。
とにもかくにも、そんなこんなで、ボスタングどっぷりな夜は更けてゆくのでした。
記:2007/04/22(from「趣味?ジャズと子育てです」)