アイム・シューティング・ハイ/アン・リチャーズ

   

波乱万丈の人生

ブライアン・ファーノン・オーケストラの演奏&アレンジとともに、溌剌としたアン・リチャーズ様の歌唱も楽しめるアルバムだ。

そして、もちろん文句なしの名盤だと思う。

アン・リチャーズ。

彼女の経歴は興味深い。

スタン・ケントンのレコードを蒐集していてケントンと知り合い、55年にケントン楽団に入団し、入団後、すぐにケントンと結婚をしてしまう。

ミュージシャンの追っかけが、バンドメンバーとなり、さらには結婚まで射止めるというシンデレラストーリーを歩んでいる。

しかし、数年後の61年には離婚し、82年に自殺という、転落人生を歩む不幸な歌手でもある。

そんな波乱万丈の人生を送った彼女ではあるが、歌唱力とセンスは抜群だ。

幸福の絶頂期だった頃の彼女の歌唱

このアルバムに収録された《プア・リトル・リッチ・ガール》、《モーニン・ロウ》、《ブロードウェイの子守唄》などは彼女のベストの出来といってもよいだろう。

個人的には、ダイナミックなホーンアレンジと、アン・リチャーズの堂々たる歌唱を楽しめる《プア・リトル・リッチ・ガール》や、アレンジの緩急と伸びやかな歌声を楽しめるマット・デニスの名曲《ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン》が好みなのでよく聴いている。

華やかでリッチなウォレーン・ベイカーの編曲とケントン楽団による優雅な演奏をバックに歌う、幸福の絶頂期だった頃の彼女の歌唱は、とてもエネルギッシュで、こちらにも「陽」のエネルギーを分けてくれるかのようだ。

華やかなサウンドと歌唱に興奮。
あるいは曲によっては心地よいリラクゼーション。

しかし、彼女の人生の終着点を知っているだけに、言いようのない切なさも半分感じてしまうことも確か。

記:2009/02/21

album data

I'M SHOOTING HIGH (Capitol)
- Ann Richards

1.I'm Shooting High
2.Mornin' Low
3.Nightingale
4.Blues In My Heart
5.I've Got To Pass Your House To Get To My House
6.Deep Night
7.Poor Little Rich Girl
8.Should I
9.I'm In The Market For You
10.Absence Makes The Heart Grow Fonder
11.Lullaby Of Broadway
12.Will You Still Be Mine

Ann Richards (vo)
with Warren Baker Orchestra Brian Farnon (cond)

1958年

 - ジャズ