歩いても 歩いても/試写会記
2018/01/09
またまた、じわ~っと感動な映画を見てしまいました。
是枝裕和監督の『歩いても 歩いても』です。
是枝監督といえば、数年前、カンヌで『誰も知らない』で注目を浴びた監督ですね。
音楽は、またもや、今回も『誰も知らない』で泣かせる旋律を奏でたゴンチチを起用。
これが、また、いいんんだなぁ。
これ以上ないというほどの絶妙なタイミングでギターが流れる。
このタイミングの素晴らしさは、素晴らしいを通り越して憎たらしいぐらいです(笑)。
しかも、ボリュームコントロールも巧みで、音楽に主張させすぎないシーンでは、まるで空気と一体化するほどの低い音量で映像に溶け込ませているんです。
これも、巧い。
いや、にくたらしい(笑)。
キャストも豪華です。
夏川結衣がアベちゃんに「あなた~」というシーンを見ると、どうしても『結婚できない男』を思い出してしまう。
もっとも、当たり前ですが、この映画の設定は『結婚できない男』の後日談ではありません。
再婚です。
夏川結衣の子連れ婚です。
とくに、私のように、
・既婚で
・子供がいて
・お盆や正月には、両家の実家に挨拶&飯食いに行き
・基本的に兄弟とは仲がよく、
・近親者を亡くしており
・家族それぞれが世代特有の価値観を頑固に持っており、
・その価値観の微妙なギャップやすれ違いを感じており、
・しかし、気に病むほどのすれ違い感を感じているわけでもなく、
・基本的に両親のことは好きだけども、べったりとした距離は置きたくないと思っており、
・父親の職業にちょっとした畏敬とコンプレックス(というほどでもないが)を持っており……
な人が見れば、
まるで、自分のことのような既視感を感じるのではないでしょうか?
今度は、上映がはじまったら、女房を連れてみにいこっと。
樹希希林の名演技、その一挙一動も、最初はユーモラスに感じるかもしれませんが、実は……。
それと、この映画のポイントは、表面的な人間関係の奥底に潜む本音の部分もありますが、やっぱり「光」がいいですね。
夏の陽ざしが。
『誰もしらない』のときもそうだったんだけど、是枝監督は、夏の日ざしをフィルムに落とし込むのがうまいなーと思いました。
カーッ!と照りつけるような強烈な日差しじゃなく、柔らかく優しく、包み込むような夏の日差し、ね。
残暑とかの。
ストーリーや人間関係を追いかけるだけではなく、スクリーンから放たれる「優しい光」も是非味わってくださいね。
6月下旬、シネカノン有楽町一丁目、渋谷アミューズCQN、新宿武蔵野館ほか、全国ロードショー。
おすすめですよ~。
記:2008/03/27