超時空メルヘン「ババジ君」第7話
第6話のつづきです。
アヤナギノ・サワヤミコは苛立っていました。
産土号がスクランブル(緊急発進)してから、とうに1時間以上も立っているというのに、定時連絡が一向に入らないのです。本来ならもう既に目的地の上空にさしかかっても良い頃です。
「もしや産土号に何かあったのでは?!」
アヤナギノ・サワヤミコは、不安になり再び神武型に接続されている文字盤(キーボード)を叩き、産土号への連絡を試みました。
しかし、反応は全くありません。
“不通”という二文字が画面にそっけなく現れるのみです。
アヤナギノ・サワヤミコは溜め息をつきました。
さっきから何回同じことを繰り返していることか。
「繋がんないよ~!」
周りの操作員達からも溜め息まじりの声が聞こえます。
みんな、先程から産土号に連絡を取ろうと試みているようです。
女性操作員たちは、産土号よりも、本当はユニワノイナホのことが心配なのですけれどね。
ユニワノイナホは明石の基地の女性隊員からは結構な人気があるのです。
エリート戦士であることに加え、それを鼻にかけない気さくさと、意外におっちょこちょいなところが人気の秘密のようですね。
明石基地の広報課作成の会報は、半年に一度「抱かれたい男性」という特集を組みますが、ユニワノイナホは3回連続で1位を獲得しています。
「ユニ様にもしものことがあったらどうしよう。」
「ユニ様が死んだら私も死んじゃう~。」
などといった女性たちの声があちこちから聞こえてきます。
いつのまにか、他の電算機を操作していた女性たちも、神武型の前に集まってきて、ちょっとした人だかりが出来てしまいました。
「あなたたち、所定の電算機に戻って仕事を続けなさい!」
と、アヤナギノ・サワヤミコが注意をしても、
「何さ、アヤナギだけイイカッコしちゃってさ。」
「ユニ様が大変な目にあっているかもしれないのに、仕事なんてやってられません。」
などといった声が聞こえてきて、いっこうに取り合ってくれません。
ホントこいつらは、いっちょシバイタロかい、とアヤナギノ・サワヤミコが拳をギュッと握り締めた時、神武型から軽いビープ音が発信されると同時に、モニターに“着信”の2文字が表示されました。
「産土号からよ、きっと!」
周囲がどよめきました。
つづく
⇒第8話
画:赤っぴ