超時空メルヘン「ババジ君」第12話
第11話の続きです。
「隊長、無事着陸が完了しました。」
「ご苦労。まずは、デリーの問題の地点に向かおう。恐らく音速で飛行していた物体の残骸や破片ぐらいは採集できるかもしれないな。」
「でもわれわれ二人が産土号を離れると、万が一の時に・・・。どちらか一人は残った方がいいのでは?」
「それもそうだな。よし、では私が行こう。お前は明石の観測所と連絡を絶えずとるように。それから、なにかあったらすぐに連絡しろ。」
「はい。分かりました。」
産土号後部のハッチが開き、エアバイクに乗った隊長が姿をあらわしました。
このエアバイク・盟神探湯(くがたち)号は、さきほどデリーの街で大爆発をおこしたデブヒゲ搭乗の「赤カブ号」ほどの性能は無いにせよ、小型で汎用性の高い空中バイクです。「では行って来るぞ~」と隊長は産土号を後にしました。エアバイクは軽快な音を立てて草原の中に消えてゆきました。
ババジ君は、着陸した大きな物体を、さきほどヘンな女の子に出会った木の上に登って、この大きな物体に見つからないように観察していました。
ナマズのように偏平で巨大な機体。後部に細い羽のようなものが何本もついていて、まるで昆虫のようです。
いったい中には誰がいるのでしょう。また、何のためにここに来たのでしょう。
好奇心は人一倍あるババジ君にとって、この巨大な物体への興味は尽きません。
できれば、近くで見てみたいのですが、不用意に近づくと攻撃されるかもしれません。
ここは慎重になった方が賢明です。
しかし、ババジ君の興味は尽きることがありません。幸いあたり一面は草むらですので、草の陰に隠れながら少しずつ近づいていけば、案外見つからないで済むかもしれません。それに...見つかったとしてもババジ君得意の俊足で逃げれば何とかなるでしょう。よし、そうしよう。
ババジ君は辺り一面に生えている草をちぎり、自分の頭や体にくっつけ始めました。
カモフラージュですね。
あっという間にババジ君は全身草だらけの「草人間」になりました。
遠くから見ると、大きな草の塊にしか見えないぐらいです。
体中が少しカユくなりましたが、ここは我慢です。
また、草同士がぶつかりあって、動くたびにカサコソと音を立てますが、こればっかりはしょうがありません。もっとも、わずかな音なので、遠くで聞こえるほどの音量でもないので、その点は心配無用です。
ババジ君は身をかがめて、少しずつ、少しずつ、大きな物体に近づいてゆきました。
つづく
⇒第13話
画:赤っぴ