デカいは正義、特にデカい船は、デカいだけで感動なのだ!~『海賊と呼ばれた男』
2019/07/10
デカ船礼賛
「日章丸事件」について詳しく知りたいと思っていたときに、ちょうど良いタイミングで読むことが出来た本、それが百田尚樹の『海賊と呼ばれた男』だ。
上下2巻とあるが、上巻から下巻の中盤にかけては、城山三郎の経済小説を読んでいるような感覚で読んでいたんだけれど、やっぱり下巻の中盤以降から、ダントツに物語が面白くなり、加速してゆく。
やっぱり日章丸ですよ。
イギリスに経済封鎖をされ、ジリ貧になっていくイラン。
良質の石油を輸出したくてもできないイラン。
そのイランに向かうタンカー、男一匹(?)日章丸。
イギリスの軍艦からの攻撃も懸念された危険な後悔。
ペルシャ湾にその姿をあらわした当時世界最大級の大きさを誇るタンカー。
戦後日本の復興ぶりを象徴するかのごとき日本が誇る巨大タンカーがイランにやってきた!
イラン国民から熱狂的に迎え入れられる日章丸。
このあたりが個人的にはクライマックスだった。
うーん、感動。
もちろん、そこにいたるまでの複雑かつ面倒な経緯を読んだ上でのカタルシスということも大きいんだけど、やっぱり、「デデーン!」と巨大な船が経済的に干上がりかけているイランに、まるで神が降臨したかのごとく描かれているところが良いですね。
それこそ『エリア88』において、プロジェクト4に基地を壊滅寸前にまで攻撃され、司令官のサキが「今度こそダメか!」と諦めかけたところに、バンバラの大統領の巨額な遺産を継承した主人公・風間真が購入したエンタープライズ級空母に搭乗しているマッコイ爺さんから無線があるシーンに匹敵するほどのスケールの大きな感動ですな。
日章丸も空母エリア88もデカい。
絶望しかけているところに、巨大な船が救いの神のごとく登場するシーンは、やはり圧巻だし、そのスケール感が感動を倍加させる。
そう、船はデカければデカいほど良いのだ。
もっとも、船じゃないけど、潜水艦だけど、それほど大きくないけれども、でも『沈黙の艦隊』の原子力潜水艦「やまと」もいいよぉ。
ニューヨーク沖で待ち構えるアメリカ海軍の眼前を、米軍の集中攻撃を逆に利用して海面を飛翔する原潜「やまと」のシーンも鳥肌ものだ。
飛べーッ!「やまと」!!
話が飛びすぎましたが、世界最大級(当時)のタンカー、日章丸見参!という、もうそのシーンを味わえるだけでも読む価値あったと思う。『海賊と呼ばれた男』は。
ちなみに、イランでは3つの船が有名なのだという。
ひとつはノアの方舟、ふたつはタイタニック号、そして3つ目は日章丸なのだという。
私の中における「2大船舶」は、なんといっても戦艦大和と空母エリア88だが、3つ目の船には日章丸が加わりそうだ。
記:2012/12/19