決してお店の誹謗中傷ではないと思うよ。
2022/07/31
ちょっと前のことだけれども、神保町「BIG BOY」で昼間に紅茶を飲んでいたときのこと。
カウンターに座っていたお客さんが、このお店気に入ったので、デジカメで店内の写真を撮ってよいですか? と丁寧にマスターに聞いている光景に出くわした。
マスターは、「いやぁ~ごめんなさい。うち、お断りしてるんですよ~。新聞とか週刊誌からの取材もお断りしてるし、基本的にはblogに掲載したいというお客さまのお申し出もお断りしてるんです。まだ、このお店始めたばかりだし、いきなり全国に知られちゃうのも、まだちょっと早いと思っているんです。」
と丁寧にお断りしていた。
いつもの光景だ。
雑誌や新聞どころかブログの掲載も断っている店なのに、じゃあ、なぜ私がメルマガやこのブログにしょっちゅう書いているのかというと、「雲さんは長年つきあっている気心の知れている人だからOK」なのだそうで(笑)。
なんでも、店のHPは作るつもりはない。なぜなら、あなたのページがうちの店のHPのようなものだからだ、だそうです。
だから、お言葉に甘えて、じゃんじゃん店のことや、マスターが花粉症で苦しそうといったプライベートなことまで遠慮なく書かせてもらっています。
しかし、私のページはともかく、他のお客さんがお店のことをブログに書くことを禁じるのってどうなのだろう?
店をオオヤケ上に開店している以上は防ぎようがないし、仕方のないことだと私は思うのだが…。
だって、「神保町・BIG BOY」で検索すると、すでに1000以上のサイトが検索されるし(私のページも多いが…)、紹介してくれている人たちの記事には、批判的な内容ってほとんど無い。
むしろ、「響」なき後の神保町に、明るくオープンな雰囲気なジャズ喫茶が出来たことを好ましく受けとってくれている人の記述がほとんどなのだ。
それでも、自分のことや、自分のお店のことが必要以上に“外”で紹介されることを極度にマスターは警戒しているようで、「知る人ぞ知る店」的なスタンスで店を運営していきたいと思っている節がある。
ま、その気持ちは多少分からないでもない。
10人も入店すれば、席が埋まってしまうほどの狭い店内だ。
常連客も多い中、その中に、いきなり、
「新聞でみたんだけど~」
な一見のお客さんがドバーっと押し寄せて、自分が大切にしている常連客をすみっこに追いやらざるをえない という状況をマスターは極度に恐れているのだ。
それでも、私は一つ気になることがある。
「店内の写真を撮っていいですか?」
と尋ねてきた客さんに対して、丁寧に断ったところまではいいんだけども、
「この前も、外国人のお客さんがいらしたときに、僕があまり英語が分かっていない、みたいなことをブログに書いたお客さんがいたんですよ。僕、アタマきちゃってね。そのお客さんのこと“出入り禁止”にしようかな、と思ってるぐらいなんですよ~」
と続けていたので、私は、マスターに、「おーい、そりゃないんじゃないの?! 大目に見てあげようよ!」と会話の中に思わず割って入ってしまった。
私もその人の書いたブログは以前読んだことがある。
でも、目クジラを立てるほどのヒドい内容ではない。
むしろ、愛すべきマスター像として描かれているし、ちゃんと、横文字職業系の紳士というフォローもされている。
店を中傷するような意図は、客観的に読んでも感じられない。
とたたみかけ
第一、忙しくてネットをチェックしていないマスター、じかにその人のブログ読んでないでしょ?
人から聞いた話だけで「自分のことをコケにされた」と思ってるだけでしょ?
まずは、その人のブログを自分で読んだ上で判断してあげてよ。
だって、そのブログを書いた人は、オレのメルマガの読者だし、オレに偶然この店でバッタリ会うことを楽しみに熱心に通ってくれている人でしょ? “オレのお客さん”でもある人を奪わないでよ。
かくいうオレ自信、少し前に、某バーから“出入り禁止”を食らった人間だから、出入り禁止を食らう人間が味わう“理不尽感”はよく分かる人間なのよ。
しかも、店の名前は書かず、店を特定できる情報も慎重に避けたうえで、
「大嫌いなサザンがかかったから帰った」
「店で演奏していたプロのギターがヘタクソだった」
と日記に書いただけでだよ?
それだけのことで、半年以上、ほぼ毎日通っていた客をバッサリ切る店の神経も「アンタ、バカぁ?」だけど、それ以上に、突然「出入り禁止」を言い渡される客の気持ち、理不尽な感覚というのはよく分かるのよ。
余談だが…
その店と、BIG BOYの共通しているところは店をはじめた大きな動機は、「趣味」だということ。
べつに趣味ではじめるのは構わないし、他の多くの店の開店動機もそのような店だろうと思う。
しかし、「趣味、趣味」と客に公言している店主が陥る罠は、「趣味でやってるんだから、趣味じゃない客は切ってもいいんだ」というロジックに陥りがちなこと。
自分の「趣味」じゃない客もいるかもしれないが、常連客は自分の店を「趣味」にしてくれている可能性が高い。
そのようなお客を店主の「趣味」ひとつで、切ったり切らなかったりということは、当事者でなくとも客からはすごく傲慢に映るものだ。
さらに、「可愛さあまって憎さ100倍」という言葉もあるとおり、いままで店を愛していた客に対して、突然、店主が手の平を返すと、それまでの店の愛情が100倍のマイナス感情となって跳ね返ってくるものだ。
結果的に、作らなくても良い敵を作ってしまうことになり、長期的に見れば、店の運営上、非常にマイナスなことだといえる。
私がよく通っているバーのママやマスターは同じことを言っていた。
「やれ趣味だ、好き嫌いだと、客相手にほざいているうちは、まだまだアマチュア。 甘いよね、そういう店は。というか信じられない。同業者として恥ずかしい。プロ意識の無い店についた客が可愛そうだよね。でも、うちは違うからねぇ、雲ちゃん、ヒイキにしてねぇ(笑)」
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で、「BIG BOY」はそういう店になって欲しくないと願っている私は、マスターに続ける。
ブログに書かれたマスターの気持ちも分からないではないけれどもさ、まずは書いた人のブログを読んでみてよ、と。
書いた人は決してマスターを中傷するような意図ではなく、むしろ愛情をこめて書いてくれているということを汲み取ってあげようよ、みたいなことを一気にまくし立てたんですわ。
そしたら、写真撮影のことをマスターに聞いていたお客さん、私の顔を見て、
「ひょっとして、雲さんですよね?」
へ? よく分かりましたね。
そういうあなたは?
町田でジャズのイラスト書いたり、本の装丁をしているものです。
マスターが元デザイナーだけあって、この店にはデザイナーや出版関係のお客さん多いなぁ、類はトモを呼ぶ?
神保町っていう土地柄?
そんなわけで、それをキッカケに名刺交換をし、デザイナー&イラストレーターの方と話し込んだわけです。
話題は、サックス。
テナーサックスから、アルトサックスへ。
好きなアルトサックス奏者の話になり、
私は、
「最近、キャノンボールを聴き直しているんですよ。彼は外見とは裏腹に(?)、非常に細やかでデリケートな音の表現をしているサックス奏者なんです。とくに、マイルスとやっているような“よそ行き”なアルバムより、プライベートでノンビリとマイペースで吹いているアルバムのほうこそに、彼のスイートな感覚、語尾のニュアンスの変化の付け方、抑揚の繊細さなど聴けば聴くほど楽しいですよ」
みたいな話しをした。
とくに、上で挙げたビル・エヴァンスとの共演作のほか、
『キャノンボールズ・ボサ』や、
『マーシー、マーシー、マーシー』のような、ガチガチの4ビートマニアが無視しそうなアルバムにこそ、彼のスイートで繊細な感覚が横溢している。
そんなことを話したっけな。
是非、お持ちの方は、聴き直して、細かなニュアンスを改めて感じとって欲しい。
そして、先述の、マスターの英語云々と書かれたブログの記事は、
⇒こちら
なのですが、興味をお持ちの方は、読んでいただき、書かれているニュアンスを感じとって欲しい。
決してお店、マスターのことを非難している内容ではないと思う。
記:2009/03/13