ピアノレス・トリオ好きにはたまらない、強力なリズムセクション!
三位一体のピアノレストリオ
『ブルーミントン』は、現在のところブランフォードのアルバムの中では一番の愛聴盤だ。
とはいえ、全部を聴きとおすのはかなりハードなので、いつも1曲目の《Xavier's Lair》をかけ、そのライブの臨場感と迫力、そしてジェフ・ワッツの変幻自在でヘヴィなドラムを楽しんでいる。
フォーマットも私がもっとも好きなピアノレスのサックストリオだ。
三位一体で微妙に、かつ自在に演奏の速度や温度を変えてゆく様が圧巻だ。
ひたすら太い低音でリズムをどっしりと支え続けるボブ(ロバート)・ハーストのベースも男一徹!
これぞベースマン。
リー・コニッツの『モーション』でのソニー・ダラスのベースもそうだが、ベーシストががっちりと底辺を死守してくれるからこそ、ドラムが奔放に暴れられるのだ。
特に、ピアノのない、管楽器のトリオにおいてのベースの役割は、地味そうで、じつはかなり重要。
ジェフ・ワッツが繰り出す重量級パンチの応酬をこれだけガッチリと受け止めるどころか、さりげなくカウンターも繰り出すボブ・ハースト(ロバート・ハースト)が素晴らしい。
とにかく、素晴らしいリズムセクションなのだ。
反射神経の鋭さ
一瞬の局面ごとに、音の重量感を素早く変えて軽々と複雑なパッセージを繰り出すブランフォードのテナーも大したもの。
純粋に「運指」などの楽器コントロールの技術だけなら、軽くコルトレーンを超えているし、音のニュアンスは個人的にはブレッカーよりも好きだ。
音のニュアンス、軽さと重量感の狭間を瞬間的に自在に行き来することが出来るブランフォードのテナーは現代的で、どこまでもスマート。
重量級リズムセクションとの相性も申し分なく、ブランフォード、ハースト、ワッツのトリオはもっとも理想的なピアノレストリオだといえるだろう。
とにかく、一瞬一瞬を聞き取り、一瞬一瞬を音で切り取る反射神経の鋭さと、発する音の重量感がたまらないのだ。
遊びや緩みの要素が皆無の硬派ジャズ中の硬派ジャズといえるだろう。
聴いているほうは、一瞬も気を緩めることができない。
しかし、聴いている瞬間瞬間の気持ちの高揚感と充実度は何にも代え難い手ごたえがあるのだ。
記:2007/03/05
album data
BLOOMINGTON (Sony)
- Blanford Marsalis
1.Xavier's Lair
2.Everythings Happens To Me
3.The Beautiful Ones
4.Citizen Tain
5.Friday The 13th
6.Roused About
Branford Marsalis (ts, ss)
Robert Hurst (b)
Jeff "Tain" Watts (ds)
1991/09/23
at Indiana University Auditorium, Bloomington