ブルーズ・ムーズ/ブルー・ミッチェル

   

シンプルだがクセになる味わい

なんといっても、一曲目の《アイル・クローズ・マイ・アイズ》だろう。

明るさの中にも、ほんのりとセンチメンタルなテイスト漂う素敵なメロディを、あくまでも朗々と吹くミッチェル。

この演奏で、『ブルーズ・ムーズ』を好きになった人は、きっと私だけではないと思う。

彼のラッパは、高音域をヒットしたりするような派手な奏法はほとんど無い。

むしろ、中音域を多用し、あくまで淡々とした吹奏の中に、さりげなく情緒を絡ませるのが、彼の持ち味だ。

特に複雑なこともやらず、あくまでシンプルさと、ストレートを身上とするスタイルだと思われる。

そこが、一度こちらの琴線に触れると、たまらないほどの魅力を感じるようになるのだ。

伸び伸びとメロディアスなトランペット

ブルー・ミッチェルは、ホレス・シルバーのグループへの加入から一躍脚光を浴びたトランペッターだ。

シルバーのリーダー作からも、彼独特のほんの少し哀愁を帯びた音色と、ストレートなプレイを聴くことが出来る。

このアルバムもシルバー・クインテット在籍時にレコーディングされたものだ。

『ブルーズ・ムーズ』というタイトル通り、明るさの中にも、ほんのりとブルーなムードで曲を彩る彼のトランペット。

そして、なんの衒いもなく伸びやか、かつメロディアスに奏でられるフレーズが気持ちよい。

慣れてくれば、テーマのみならず、彼が紡ぎだしたアドリブのメロディラインも歌えるようになるのはずだ。

ケリーのサポートも光る

イキの良いウイントン・ケリーのバッキングも見逃せない。

もし、この演奏のピアニストがケリーでなければ、もしかしたらこの演奏の魅力は半減していたかもしれない。

心躍るイントロ、小粋に煽るバッキング。

ミッチェルは、おそらくケリーのご機嫌なピアノのサポートによって、リラックスすると同時に、メロディアスさといい、リズミックなセンスといい、ケリーの良いところがすべて引き出されたのではないかと思うほど、それほどケリーのピアノの貢献度が高いのだ。

もちろん《アイル・クローズ・マイ・アイズ》以外もご機嫌なナンバーが続く。

素直で真っ直ぐ。
明るく切なく柔らかい。
何度聴いても深い味わいを与えてくれるアルバムだ。

記:2002/09/18

album data

BLUE'S MOODS (Riverside)
- Blue Mitchell

1.I'll Close My Eyes
2.Avars
3.Scrapple From The Apple
4.Kinda Vague
5.Sir John
6.Whe I Fall In Love
7.Sweet Pumpkin
8.I Wish I Knew

Richard "Blue" Mitchell (tp)
Wynton Kelly (p)
Sam Jones (b)
Roy Brooks (ds)

1960/08/24 & 25

 - ジャズ