僕の彼女を紹介します/試写レポート

      2018/01/09

僕の彼女を紹介します [DVD]僕の彼女を紹介します

“男までもが泣いている!83%が泣いた!”

これ、新聞やTVのキャッチコピー。

本当に?
涙腺の緩い男ばかりが試写会場に集められたんじゃないの?

おそらく多くの人は、後半の“あのへん”で涙したのだろうけど、“あのへん”がオレ、一番描写が冗長でアクビが出ちゃったところなんだよね。
試写会場の雰囲気も、“あのへん”がいちばん、「まだ終わらないのぉ?」という空気が充満していたようが気がするんだけど、気のせいかな?

この映画は、一言で言っちゃえば、『猟奇的な彼女』の第2弾です。
ま、監督も主演女優も同じなんだから当たり前といえば当たり前なんだろうけれども、要するに、チョン・ジヒョンという女優の魅力を最適なカタチで引き出している映画です。

この映画の監督と脚本を手がけたクァク・ジョヨンは、チョン・ジヒョンという女優の長編プロモーションを撮る感覚で作ったんだと思う。
プロモーションを撮るからには、可愛く、魅力的に描かなければならない。
では、彼女を、どう描けば、もっとも美しく輝かせることが出来るのか。

「過激でハチャメチャ。でも、根は純なキャラ」。

これが、クァク・ジョヨンの回答だ。
しかも、彼はこのキャラクター像に強い確信を持っている。
それが証拠に、職業こそ変われど、基本的には『猟奇的な彼女』と『ボクの彼女』のチョン・ジヒョンのキャラクターはまったくといって良いほど変わっていない。
チョン・ジヒョンの行動のハチャメチャさをナレーションする“語りべ”として、気弱でお人よしな青年が選ばれているところも共通している。

行動が滅茶苦茶なほど、純な部分が出たときの可愛らしさが引き立つし、このギャップが映画としてのリズムをも生み出すのだ。
さらに、彼女の様々な表情をもフィルムに焼き付けることが出来る。
だからこそ『ボクの彼女』では、『猟奇的な彼女』の成功で掴んだ手法をそのまま踏襲しているのだろう。

さらに、キャラ設定だけではなく、ストーリーの基本的な骨格も、まったく同じなのだ。

出会って、(男が)振り回されて、一時的に別れて、再会する。で、再会が感動的。というパターンだ。

もちろん、今回の場合は“再会”のカタチが前作とは違うけれども、多くの男が涙したというシーンは、きっと“再会”の“あの”場面だろうと思う。

この“再会”を感動的に描くために、前半は猛スピードで“思い出づくり”。
数々のエピソードを詰め込む。
この前半における小気味良いテンポで進行する物語のスピード感は、楽しく、気持ちが良い。

しかし、このスピード感は、後半の“別れ”と“再会”のためにあるのだ。

“別れ”と“再会”をより一層効果的に演出するためには、出会いから別れまでのエピソードを急ピッチで畳み掛ける必要があるのだ。
鑑賞者と一緒に、駆け足で思い出を蓄積してゆく。
映画の鑑賞者の脳の中に楽しく、甘く、スリリングで美しい記憶がハイピッチでインストールされる。

思い出の埋め込み作業をしたら、あとは、テンポを落とし、切なく悲しい“別れ”と“再会”のパートが始まる。
この映画のミソは後半にあるのだが、じゃあ、泣けるのかというと、うーん、そうかぁ?って感じ。俺はね。

なんだか、前半が軽やかだっただけに、このテンポとスピード感に慣れてしまった脳がインターチェンジ効果をおこして、ゆっくりと流れる時間が、さらにゆったりと見えてしまうのだ。
よって、必要以上に長く感じてしまい、もっとコンパクトにまとまらないものかと思ってしまったのが正直な感想。
“あのシーン”というか、ようするに“風のシーン”なんですが、ゴージャス、かつ感動的に演出しようという意図はよーく分かるが、個人的にはあまり響かなかった。
演出過剰の嘘臭さのほうがが目立つんだよね。
ユーミンの歌って、「さぁ、ここからサビです」というのがすぐ分かるのと同じように、さぁ、これから大感動の洪水に入りますからねぇと、力みすぎているような気がするんだよね。だから無意識に構えてしまう。
よって、私の場合は、泣かなかった17%の男のほうになるわけだ。

それにしても、チョン・ジヒョンは面白い女優だ。
ものすごく美形でも、とっても可愛いルックスというわけでもないのに、シチュエーションと行動次第では、とても輝いて見える。
反対に、シチュエーションと表情次第では、かなりイモにも見えるし、浮腫(むく)んだ顔した“イモ姉ちゃん”に見えるシーンも多いわけで、こんなにシーンによって印象の異なる女優も珍しい。

しかし、警察の制服を着て、シャキッと背を伸ばしている彼女の姿は美しく、かつ凛々しかった。
さすがモデルなだけあって、スタイルは良い。背も高いし。

背の高さといえば、面白い話がある。
宝島社から『あの人の国、「韓国」が大好き。』という本が出ているが、この本によると、チョン・ジヒョンという女優は、現在韓国の男性が一番つきあいたい女優ナンバーワンなのだそうだ。

なぜか?

背が高いから、だって(笑)。

これも同書からの受け売りだが、韓国人男性は、「美人で背が低い女性」よりも「ブスで背が高い女性」と付きあいたいと思う傾向が強いのだそうだ。
理由は、“自分のステータスがあがったように感じるから”。
国産車よりもベンツやBMに乗っていたほうが、ステータスあがってカッコイイってことと同じなんだろうか?

娘の大学の合格祝いの母親からのプレゼントが“整形手術”。
デパートどころか、スーパーへ行くときですらオメカシをする主婦。
海外出張のビジネスマンは、ヨーロッパの国々で「首都なのに高層ビルがないなんて、わが国のほうが進んでいるではないか」と優越感に浸る。

韓国男性のチョン・ジヒョン人気は、外面を気にしがちな国民性ゆえの嗜好なのかもしれない。
もちろん韓国人全員が見栄っ張りだとは言わない。儒教の教えが強く根付いている国のこと、慎ましやかな人々も多くはいるだろう。
これを書いている私の心の中にだって「見栄っぱり根性」はトグロを撒いているし、結構外面を気にする対象もあったりはする。ただ、それが露骨すぎるのは、個人的にはあまり好きじゃないな。
誰にでもある欲望も、そのセーブの仕方と、出し方が、人間性だったり、ひいては国民性につながるんじゃないかなぁと思う。この国民性が端的に現われていることの一つが、連れて歩くとステータスが上がりそうなチョン・ジヒョンを彼女にしたい韓国男のメンタリティなのだろう。
連れて歩く歩かないとかという発想がそもそもない私にとって、好きな韓国女優は、ペ・ドゥナとかイ・ヨンエなんだけど(チェ・ジウはちょっと…)、本国の男性からの評価はどうなんだろう?

もちろん、チョン・ジヒョンも可愛いとは思う。
アカ抜けきれていなさ具合が醸し出す、妙な魅力があることは確かだ(この映画の彼女のドアップな顔のポスターやチラシをご覧になっていただければ分かると思うけれど)。
でも、いくら背が高くて可愛くて、連れて歩いてステータスがアップしたとしても(先述したとおり、女を連れてステータスという発想そのものが私にはないけれども)、感情の起伏の激しい“猟奇的な”彼女に振り回されるのは御免こうむりたいっす。

観た日:2004/10/07

movie data

製作年 : 2004年
製作国 : 韓国
監督・脚本:クァク・ジョヨン
出演:チョン・ジヒョン、チャン・ヒョク、キム・テウ、チャン・ホビン、キム・スロ、チャ・テヒョン、ユミ ほか

記:2004/12/04

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