カフェ・モンマルトル

高野雲の雑記帳。音楽・映画・読書・模型。

ボトムズ・アップ/イリノイ・ジャケー

      2022/04/23

テキサステナー ソウルテナー

学生時代に私はジャズ喫茶でアルバイトをしていたが、その時に知り合ったテナーサックス吹き君がいる。

彼とは、何度かジャズ研の定期演奏会に参加をしてもらい、その豪放な吹きっぷりで大いに客席を盛り上げてくれたりした。我々ジャズ研にはいないタイプのテナー吹きゆえ、彼のキャラクターは、ライヴを盛り上げるのに一役も二役も買ってくれて、とても助かった記憶がある。

そのテナー吹き君は、もちろん将来はテナーマンを目指していたというわけではないが、総武線沿線の音楽教室の個人レッスンには通っており、けっこう真面目に一日何時間もテナーサックスを練習していたようだ。

そんな彼が好きなテナーはと聞くと、テキサステナー!
とりわけアーネット・コブとイリノイ・ジャケーが好きだと言っていた。

また、ソウル系のテナーも好きで、ジーン・アモンズがお気に入りだと話していたことを思い出す。

当時の私は、まだジャズの初心者の段階だったので、テキサステナーとソウルテナーの違いがよくわからなかった。
同じに感じていたといっても過言ではない。
要は、豪放で、あまり細かいことにはこだわらなにスタイル。

少なくとも、コルトレーンやブレッカーのようにロジカルにフレーズを突き詰めながら構築していくタイプとは対極の位置づけのテナーだと感じていた。

しかし、だんだん彼らのプレイを聴いていくうちに、テキサス系とソウル系の「違い(のようなもの)」が「音」でわかってきた。

分類上の定義をざっくり言葉にすると、テキサス系テナーは「テキサス出身(あるいはテキサスで活躍した)テナー奏者独特のスタイルで、豪快なプレイを身上とするスタイル」であり、「ホンクする、つまり車のクラクション、ガチョウの鳴き声のように、騒々しく音をグロール(咽で声を出し、音色を歪ませながら吹く)させたり、同じフレーズをしつこく連発したり、甲高い音を連発したりといった煽るプレイをするサックス吹きのことをホンカーという」というぐらいの知識はガイド本やライナーノーツを読まずとも、何枚もレコードを聴いているうちに実感として理解できるようになってきた。

同じく、ソウルテナーは「豪快でありながらも、やたらと煽り立てるようにやかましいテキサス系テナーとは違い、ソウルミュージックに通ずる黒人独特のメロディアスさと、甘さをも兼ね備えた」テナー吹きが多いということも分かってきた。

もちろん、一口にゴスペルをルーツに持つソウルといっても、かなり広範にわたるエリアの広さを誇っており、たとえばハンク・モブレーも『ソウル・ステーション』もアルバムタイトルからも、さらにアルバム中のプレイもソウルフルでメロディアスなプレイをしていることから「ソウル系テナー」と言えないこともないが、どちらかというとジーン・アモンズのような豪快さや泥臭さ(アーシーさ)が加味されているほうが、個人的には世間ではソウルテナーと呼ばれているテイストに近いのかな?などと、これも音を通してボンヤリと考えたりもした。

もちろん、テキサス系テナーだからといって、全員が全員荒くれまくっているというわけでもなく、ソウル系テナーだって、激しくブロウすることだってある。

この両者の要素を兼ね備えたマージナルゾーン的エリアに存在するテナー吹きだっているわけで、簡単に「ここからここまでがテキサスで、ここからここまでがソウルだよ」と線引きできるわけでもない。

勢いだけでなく、ストーリーテリングが秀逸で、そのバイタリティと、そのエネルギーを統御する知性をも感じさせるプレイをするテナー吹きだってたくさんいるわけだ。

反対に、ソウル系のテナーはメロディアスで甘い要素があれば良いというだけではなく、時にテキサステナーばりの豪放なブローを交えることもある。

その片鱗を感じさせるのがイリノイ・ジャケーがプレスティッジに吹き込んだ『ボトムズ・アップ』だ。

そこで、このジャケー

彼のテナーは、さすがテキサス系テナーと呼ばれるだけのことはあって、ある意味「下品」な音色で、あくまで豪放さを失わずにぐいぐい突き進んでいくが、メロディアスさも忘れず、口ずさみやすいフレーズも連発し、そのフレーズの合間からはソウルフルさも横溢している。豪放さ、タフさ、そして甘くメロディアスなフレーズ。全部はいっている。そして、これらの緩急っぷりがとても気持ち良いのだ。

だから、私の場合は、一概に「この人はテキサス系だから」とか「この人はソウル系だから」という、まるで出身県や出身大学やで先入観を形作ってから人物を評価するかのような聴き方はしない。

スタイルの分類というのは、あくまで便宜上の括りであって、同じ系列に分類されているからといって、表現の根っこにある表現欲求はまったく別物であることのほうが多いからだ。

だから、私はこのアルバムのジャケーが好きなのだ。
ブルースが根っこにあるテキサススタイルといわれながらも、ゴスペルが根っこにあるとされるソウルフルな表現だってお手のもの。この表現レンジの広さと適度や野暮ったさ。たこ焼きを食べているような嬉しさと満足感を味わうことが出来るのだ。

記:2012/02/07

album data

BOTTOMS UP ()
- Illinois Jacquet

1.Bottoms Up
2.Port of Rico
3.You Left Me All Alone
4.Sassy
5.Jivin' with Jack the Bellboy
6.I Don't Stand a Ghost of a Chance with You
7.Our Delight
8.Don't Blame Me

Illinois Jacquet (ts)
Barry Harris (p)
Ben Tucker (b)
Alan Dawson (ds)

1968/03/26

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Black
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