四次元怪獣ブルトンが好きだ。

      2024/09/05

ウルトラシリーズの怪獣で好きな怪獣は、迷わずブルトン、次点がプリズ魔とバルンガかな。

上記3つの「怪獣」は、手も足も顔も無い、怪獣というよりは「物体」に近いものなのだが、その「別世界度の高さ」ゆえか、幼い頃から常に気になる存在だった。

特に、初代ウルトラマンに登場する四次元怪獣ブルトン。

あのテトラポットのようなルックスはいったいなんなんだ?

気持ち悪くて、気持ち良いルックス。

とにかく気になる。

見ていて飽きない。

ブルトンのソフトビニール人形を通販で手に入れ、部屋に飾ってあるのだが、その不思議な造形は毎日眺めてもまったく見飽きることがない。

マン怪獣/ブルトン/ソフビ/フィギュア/エクスプラス/X-PLUS 少年リック限定
ノーブランド品

もちろん『ウルトラマン』本編での話(無限へのパスポート)もシュールな内容で面白かったし、軟体動物のようにブニュブニュ動くブルトンの姿も、なんだか気持ち悪くて気持ち良いものだった。

記:1999/03/23

追記

ブルトンの造形は、色々調べてみたんだけど、特定のオマージュや直接的な元ネタがあるのかという確証は(個人的には)得られなかった。

ただ、そのデザインや造形、ストーリーの概念には、昭和41年(1966年)という当時の時代背景が強く影響しているのではないかと考えられる。

1960年代は、日本国内でアートやデザインの分野で大きな変革が起こった時期で、この時代はモダニズム、アバンギャルド(前衛芸術)、さらには抽象的な美術運動が盛んで、多くのアーティストが新しい表現手法を模索していた時代だった。

ブルトンは、単純な怪獣の姿とは異なり、複数の立方体のブロック(テトラポット)が絡み合って構成されたような外観、つまり抽象的な形状だ。これは、当時の現代美術や彫刻からの影響を受けた可能性が大だ。

また、1960年代は科学や宇宙に対する関心が高まっていた時代でもあり、特にアメリカの宇宙開発や冷戦下のテクノロジー競争が注目されていた背景も見逃せないだろう。
ウルトラマンシリーズ自体も「宇宙」や「異次元」などをテーマにしているからね。

ブルトンの「四次元怪獣」という設定も、当時の人々が抱いていた「未知の次元」や「異世界」への想像力を刺激するコンセプトに基づいているのかもしれない。

このような新しい概念、世界観を、視覚的に表現しようとした模索した結果として、ブルトンの奇抜なデザインが生まれたのかもしれない。

また、ブルトンのデザインは、特定の既存の作品や生物に直接影響を受けたというよりも、抽象的な芸術やサイエンス・フィクション的なアイデアに基づいて、完全にオリジナルなものとして創造された可能性が高いとも考えられるが、形状が無機質で立体的な点は、抽象彫刻やモダンアート、さらには当時流行していたサイケデリックアートの影響を受けたのではないかと考えることもできる。

いや、サイケデリックというよりも、シュールレアリスム(超現実主義)ですな。
何といっても、ブルトンの名前自体が、アンドレ・ブルトンから来ている可能性が非常に高いわけだから。

他にもバルタン星人の名前がフランスのシンガーシルヴィー・バルタンに由来しているという点や、三面怪獣ダダの名前がダダイズムから取られていることは、制作スタッフの近代美術に対する深い造詣と強い憧れが感じられる。おそらくウルトラマンシリーズの制作スタッフは、欧州の前衛芸術やシュールレアリスムに強い影響を受けていたのだろう。

そういえば、ブルトンのデザインも、シュールレアリスムの影響を受けているようにも見える。
ブルトンという名前自体も、シュールレアリスムのアンドレ・ブルトンから来ていることはほぼ間違いないだろう。
なにせ、アンドレ・ブルトンといえば、1924年に「シュルレアリスム宣言」を発表した詩人だからね。
もっとも、このシュルレアリスムという言葉自体ははフランスの詩人、ギョーム・アポリネールが作った言葉ではあるのだけれど。

ちなみに、日本語では「超現実主義」と訳されるのが一般的で定着しているが、もともとの意味は「とんでもなく、めちゃめちゃ現実であること」なようだ。

そういえば、ブルトンが登場するエピソード「無限へのパスポート」も「とんでもなく、めちゃくちゃ」な話だった。
空に延々と続く階段を登って行ったり、崖から飛び降りたら、ゴミ箱に頭を逆さまに突っ込んでいたりと。そういえば、両方とも被害者はイデ隊員だったな(笑)。

このように怪獣の造型のみならず、ストーリーの方も「超現実主義」、いや、「「とんでもなく、めちゃめちゃ現実」という言葉とリンクするかのように子ども向けな内容でありながらも、大人が見ても、その世界の歪みっぷりの描写が見事だと唸ってしまう内容となっている。

当時のウルトラマンのクリエイターたちは、アートや文学の深い知識を持ち、子ども向けの番組という制約の中、分かりやすい形で自分たちが思い描く美術、文学の世界観を作品として実現しようと意気込んでいたに違いない。
そのようなことからも、「ウルトラマン」は単なる特撮番組にとどまらず、創作の背景には豊かな芸術的探求があったといえるだろう。

そんなことに気づくのは、ウルトラ少年たちが、大人になった数十年後のことになるのだろうが、それはそれで、まるでタイムカプセルのように未来への素晴らしい贈り物になっているのだ。

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