ケニー・バレル vol.2/ケニー・バレル

   

ドーハム好きにも嬉しい内容

ジャケットの余白が気になりませんか?

アンディ・ウォーホルが描いたイラストだ。おそらくLPジャケットの正方形を念頭に置いてこの絵を描いたわけではないのでしょう(横長の画用紙に描いたのかな?)。

だから、このイラストを正方形のジャケットにそのまま当てはめると、当然余白が出来ますよね?

しかも、その余白が、上下に均等にあるのではなく、思いっきり下に集中しています。

余白といえば、それと、右端にも広いスペースがありますよね。

だから、正方形のジャケットのカタチからすると、収まりが悪く、一見アンバランスに見えるんだけれども、よく見ると、この絵の位置はアルバムの上方でしかあり得ないんだという確信がむくむくと湧きあがってくるから不思議です。

もちろん、絵そのものも素晴らしいのですが、それ以上に、絵のレイアウトセンスが素晴らしい。

アルバムタイトルもレーベル名も、上方に座らせてしまう大胆不敵さも魅力。

不思議な余韻を残すジャケットではあります。

できればLPのサイズで味わいたいものですが、CDのサイズでも、ウォーホルによる線画の魅力は十分に味わえることでしょう。

素晴らしいものはスケール縮小されても、素晴らしいものは素晴らしい。

大きくなければ、あるいは間近で鑑賞しなければ魅力が伝わらない絵画ももちろんありますが、この線画の場合は、むしろコンパクトサイズだからこそ、小粋でおしゃれに感じさせる魅力を十分に湛えています。

むしろ、レコードやCDのジャケットのように、複製、印刷、大量生産されても、作品の味わいが損なわれることなく残ることがウォーホルの良さなのではないでしょうか。

なにしろ、線画にのせたインクを紙に転写する「ブロッテド・ライン」という大量印刷に向いた手法を発明したポップ・アートの旗手ですからね。

後にキャンベル・スープの缶やマリリン・モンローをモチーフにシルクスクリーンプリントで大量生産された作品を生み出す彼。

そんな彼が若い頃の絵を採用するブルーノートって、やっぱり凄いレーベルというか、アルフレッド・ライオンの本物を見る目は、やっぱり素晴らしいですね。

初期のウォーホルの作品に興味を持った方は、以下の本をどうぞ。
(・∀・)b


アンディ・ウォーホル50年代イラストブック

さて、ブルーノート発、ケニー・バレルの2枚目のリーダーアルバム。

ヴァーヴから『ケニー・バレルの全貌』という邦題のアルバムが出ていますが、まさにこのアルバムのほうにこそ、そのタイトルを冠したいですね。

ギター一本によるソロ演奏もあれば、ライブでのレコーディングまで、いろいろな角度から、ケニー・バレルというギタリストの魅力を味わってもらおうという趣旨のアルバムなのだと思います。

常にブルーな気分と色彩をたたえたバレルの音色は、どんな編成だろうが、どのような曲だろうが、変わることなく、しっとりとブルージー。

しかも、コテコテなブルージーさではなく、まさに都会の夜が似合うスルリと喉越しの良い、垢抜けたブルージーさですね。

きっと、彼のフレージングがゴツゴツしていずに、あくまでも流麗で滑らかなことが、その秘密なのでしょう。

3曲目の《メキシコ・シティ》は、ケニー・ドーハムのライブ盤『アット・ザ・カフェ・ボヘミア』に収録されている曲の別バージョンなので、ケニーはケニーでも、ドーハムのほうのファンにとっても嬉しい内容なのです。

記:2005/01/05

album data

KENNY BURRELL Vol.2 (Blue Note)
- Kenny Burrell

1.Get Happy
2.But Not For Me
3.Mexico City
4.Moten Swing
5.Cheeta
6.Now See How You Are
7.Phinupi
8.How About You

Kenny Burrell (g)
Kenny Dorham (tp) #3
Frank Foster (ts) #6-8
J.R.Monterose (ts) #3
Tommy Flanagan (p) #1,4-8
Bobby Timmons (p) #3
Oscar Pettiford (b) #4-8
Sam Jones (b) #3
Paul Chambers (b) #1
Shadow Wilson (ds) #4-8
Kenny Clarke (ds) #1
Arthur Edgehill (ds) #3
Candido (conga) #1

1956/03/12 , 05/29 , 05/30 , 05/31

 - ジャズ