カリカチャーズ/ドナルド・バード

   

4ビートジャズではないが充実のリズムとアレンジ

なんとベースが、あのモータウンの伝説のベーシスト、ジェームス・ジェマーソン!

といっても、最初の1曲だけだけど。

さらに、ドラムスが、あのハーヴィ・メイソン!

といっても、これも1曲だけの参加だけど。

“いわゆるジャズなテイスト”を期待して聴くと、とんだ肩透かしを食らうと思う。

私は「ソウルがかったフュージョン音楽」として軽く聴いているが、うーん、もうドナルド・バードのトランペットがどうこうという世界じゃないですな。

彼のトランペット、もちろんフィーチャーされている箇所もあるにはあるが、完全にオケの一要因としての機能。

バードならではのテイスト、個人技といった世界ではなく、元気にはっちゃけたポップな音楽として聴きましょう。

プロデュースは、ラリー・マイゼルとフォンス・マイゼル兄弟。

肩のほぐれるようなリラックス&心地よいサウンドだが、どうも個人的にはこのアルバムのサウンドは軽いというかポップ過ぎて好きじゃない。

『ストリート・レディ』や『ブラックバード』など、ソウルがかったバードのアルバムには、お気に入りの多い私だし、同じ“マイゼル・アレンジ”でも、このあたりのテイストは買うが、どうもこのアルバムのカチッとしたタイトさを追及することを優先したアレンジには少々辟易気味。

ダンサンブルに特化するのは良いが、音色もアレンジも中途半端に“古新し”いからかな、あまり何度も聴こうとは思えない内容ではある。

ジェマーソンのベースが聴けるから!といった1点で、かろうじて自宅のCD棚に収納されてはいるが、おそらくベースがジェマーソンではなかったら、速攻で中古屋行きのサウンドだ。

ハードバップ大好き、4ビート大好きな人は、手を出さないほうが身のためでしょう。
あるいは、中古ショップで100円ぐらいで放出されていたら話のタネに買ってみるのもいいかもしれないが、間違っても4ビート好きな人が定価では買わないほうが良いと思う。

ドナルド・バード、ブルーノートの最後のアルバムでもある。

記:2008/02/10

album data

CARICATURES (Blue Note)
- Donald Byrd

1.Dance Band
2.Wild Life
3.Caricatures
4.Science Funktion
5.Dancing In The Street
6.Return Of The King
7.Onward 'Til Morning
8.Tell Me

Donald Byrd (tp,flh,lead vocal)
Oscar Brashear (tp)
Fonce Mizell(key, tp, back vo)
George Bohanon (tb)
Gary Bartz, Ernie Watts(reeds)
John Rowin,Bernard "Beloyd" Taylor,David T.Walker (g)
Jerry Peters,Patrice Rushen,Skip Scarborough (key)
James Jamerson (el-b) #1
Scott Edwards (el-b) except #1
Alphonse Mouzon(ds) except #1
Harvey Mason(ds) #2-8
Mayuto Carrea,Stephanie Spruill(per)
Mildred Lane(lead vo) #2,5
Kay Haith(lead vo) #3,7
Theresa Mitchell,Vernessa Mitchell,Larry Mizell(back vo)
Wade Marcus (string arr)

1976/4-5月

 - ジャズ