チェット・ベイカー・シングズ/チェット・ベイカー

   

朝聴くチェットも良いもんだ

朝によく聴く。

“チェット・ベイカーは夜に限る”と言って憚らない人もいるが、私にとっては朝。特に『チェット・ベイカー・シングズ』は朝に限る。

だって、《ザッツ・オールド・フィーリング》の出だしのソフトなトランペットと、メリハリの利いた、どこまでも“陽性”なラス・フリーマンのピアノだよ?

これを聴きながら、まだ覚醒しきっていないボーッとした頭で、コーヒーを入れ、タバコに火をつけて、軽やかで良い具合に力を抜けたサウンドに身を任せていれば、ゆるやかに能動的な気分になってくるというもの。

温いタオルを顔にあてるような、刺激は少ないけれども、心地の良いチェットのヴォーカルも寝惚けた頭を軽くマッサージしてくれる。

このアルバムの“湿気を含まないマッタリさ”は、ゆっくりと胎動し始める静かな朝の空気にはピッタリ。

2曲目の《イッツ・オールウェイズ・ユー》が流れ始める頃は、少しずつ覚醒しはじめた私の頭と、静かな朝のスローな時間がゆっくりとシンクロしはじめるのだ。

全体的にゆる~い感じが心地よく、また寝てしまうこともあるにはあるが(笑)。

その分岐点は、ラス・フリーマンがチェレスタを弾く《マイ・アイディアル》あたりかな?

まどろみと覚醒が心地よく共存している朝の空気に、最適な雰囲気を提供してくれるアルバムには違いない。
素敵です。

私にとっては愛すべき“朝の愛聴盤”だ。

記:2003/07/29

album data

CHET BAKER SINGS (Pacific Jazz)
- Chet Baker

1.That Old Feeling
2.It's Always You
3.Like Someone In Love
4.My Ideal
5.I've Never Been In Love Before
6.My Buddy
7.But Not For Me
8.Time After Time
9.I Get Along Without You Very Well
10.My Funny Valentine
11.There Will Never Be Another You
12.The Thrill Is Gone
13.I Fall In Love Too Easily
14.Look For The Silver Ring

Chet Baker (tp,vo)
Russ Freeman (p,celeste)
Carson Smith (b)
James Bond (b) #1,2,5,6 Bob Neel (ds)
Peter Littman (ds) #1,2,5,6

1954/02/15 #7-14
1956/07/23 #1,2,5,6
1956/01/30 #3,4

 - ジャズ