チャイム/斉藤由貴
フレットレスベース
今だにエレクトリックベースといえばフレットレスが大好き。
大昔から私は「フレットレス病」なんですね。
中学生の頃に、ジャパンのミック・カーンのフレットレスベースに魅せられ、高校生の頃はブランドXやブライアン・イーノの『アナザー・グリーン・ワールド』のパーシー・ジョーンズのフレットレスベースに魅せられ、大学にはいってからベースを始めたのけれど、彼らの影響のためか、ほぼいきなりフレットレスベースからベースをはじめたという大バカ者なのであります。
そして、今でもメインに使っているベースはフレットレス。
なんというか、大げさに言えば「フレットレスベース人生」そのものの私は、たしかにミック・カーンやパーシー・ジョーンズの演奏を聴いて、「すげー!カッコいい!⇒だから自分もフレットレスベースを弾いてみたい!」という欲求が芽生えたのですが、考えてみたら、彼ら以外のフレットレスサウンドも無意識に耳にしていたことを思い出した。
そう、先日、たまたま斉藤由貴の《アクリル色の微笑み》がiTunesから流れてきて、ものすごく懐かしい気分になったのだが、この曲のベースもフレットレスなんだよね。
アクリル色の微笑み
斉藤由貴が自ら作詞した《アクリル色の微笑み》という歌は、『チャイム』というアルバムに収録されているのだが、このアルバム、私は大好きで高校時代によく聴いていました。
当時、斉藤由貴がイメージキャラクターだったAXIAのカセットテープにCDから音源を録音してウォークマンでよく聴いていたんですね。
ちなみに、AXIAに録音していたカセットテープはまだ残っていて、それが上の写真なんですが、当時はマメに『FMファン』だったと思うけど、FM雑誌についていた斉藤由貴の写真を切り取ってカセットのプラスティックケースを飾るビジュアル用してみたりと、なんだか、丁寧に自分専用の音パッケージを作っていたのだなと思います。
斉藤由貴の『チャイム』
で、フレットレスベースの音色が独特な効果を曲にもたらしている『チャイム』というアルバムは、『ガラスの鼓動』に続く、斉藤由貴の3枚目のアルバムだ。
残念ながら、彼女を代表する名曲《卒業》は収録されてはいない。
しかし、当時のヒット曲《悲しみよこんにちは》や《青空のかけら》などのキャッチーなナンバーが収録されているのが嬉しい。
このこともあってか、オリコンチャートでは最高順位2位を記録している。
しかし、上記2曲以外にも聞き込めば味のあるナンバーが多く、武部聡志のセンスの良いアレンジがアルバム前編にわたって冴え渡っているため、一瞬たりとも冗長な箇所はなく、飽きがくる瞬間がない。
たぶん、80年代のアイドルのアルバムの中でも、アレンジやサウンドメイキングに関しては、間違いなく上位に食い込むほどのクオリティです。
《水の春》という曲のスピード感と清涼感溢れるアレンジなんて、今聴いても、けっこうスリリング。
当時、PSY'Sを好んで聴いていた少年少女たち(今は中年オジサン・オバサンたち)にとっては、デジタルで明るいパステルカラーと原色が世の中を彩っていた80年代半ばを思い出すんじゃないかな?
ところで、当時は、なんで「チャイム」の音や、《チャイム》というタイトルの曲がはいっていないのに、アルバムタイトルが『チャイム』なんだろうと疑問に思っていたんですね。
歌詞を読むと、このアルバムに収録されている歌の世界のほとんどが、高校生が主人公の歌世界。
だから、高校生⇒高校⇒学校⇒チャイムなのかな?……などと考えたこともあるし、名曲《予感》の後半に、♪シャン!という音、これはおそらく当時普及しはじめたデジタルシンセで作られた音色がはいっているから、このことを指しているのかな? とも考えられるし、もっとベタに《自転車にのって》という曲にSEとして入っている自転車のベルの音なのかな? などと色々考えていたものです。
そうそう、《予感》は名曲です。
メロディ良し、アレンジも素晴らしい。
もちろん透明感あふれる斉藤由貴の歌唱も素晴らしい。
『スケバン刑事』の麻宮サキのイメージからはほど遠い世界だし、この曲一曲だけでも、当時の彼女は人気、実力ともに超がつくほどの正統派アイドルだったんだということを改めて思い知ることができます。
当時のニッポンの空気
しかし、残念なことに、当時はシロウトがもてはやされていた時代でもあるんだよね。
おニャン子クラブのブームに、女子大生ブーム。
もちろん、菊地桃子や、スケバン刑事の続編『II』で、二台目麻宮サキのコードネームを襲名した南野陽子の爆発的なブームもあったので、この時代の誰もがシロウトっぽいアイドルに目を奪われていたというわけでもないのでしょうけど、私の周囲の野郎どもは、皆、おニャン子クラブにお熱だったなあ。
ま、通っていた高校が、当時のフジテレビの目と鼻の先だったこともあったのかもしれないから、私の周囲に限っての話なのかもしれないけど。
なにしろ、下校中は、よく学校帰りで制服を着たままフジテレビの『夕やけニャンニャン』の収録に向かうメンバーたちとすれ違ってましたから、本当、日常の延長線上に存在していたアイドルのほうに魅せられてしまう気持ちも分からなくはないのですが。
ところで、私が大好きな『チャイム』というアルバム、他の人は、どう評価しているのかな?と思ってAmazonのカスタマーレビューをのぞいてみました。
すると、「内容は素晴らしいのに、若手演歌歌手のようなジャケットで損をしている」というようなレビューがありました。
嗚呼、言われてみればその通りかもしれない。
よく言えばホットカルピスが似合いそうなムードのジャケ写ではあるけれども、たしかに演歌のポスターのテイストかもしれない。
背景はピンクではあるけれども、なーんか、地味ぃ〜ですよね。
中身のサウンドは、もっとカラフルで、もっと勢いに溢れ、もっと奥行きがあるのに、うーん、たしかにジャケットで損をしているかもしれない。
もちろん、当時はオリコンチャートの上位に食い込むほどのヒット作ではあったんだけれども、リアルタイムではない現在、はじめて斉藤由貴を聴こうと思うリスナーには、あまり訴求しないビジュアルではありますな。
もっとも、30年以上経った現在、はじめて『チャイム』を聴いてみようと考える若者がどれほどいるのかは分からないのだけれども、音楽が素晴らしいだけに、ショップ店頭で手に取ったはいけど、CD棚に戻されそうなジャケットデザイン、ほんのちょっぴり残念ではあります。
もしこれを読んで興味を持った方がいらっしゃれば、ジャケットは気にせず、ぜひ、中身の素晴らしい歌と音に触れてみてください。
記:2015/07/19
収録曲
1.指輪物語
2.予感
3.悲しみよこんにちは
4.ストローハットの夏想い
5.つけなかった嘘
6.いちご水のグラス
7.青空のかけら(New Mix)
8.水の春
9.自転車にのって
10.アクリル色の微笑
11.SORAMIMI
12.あなたの声を聞いた夜