ビリー・ホリデイの歌声に突き動かされて上京し、社長になった男
珈琲ショップ「ビリー・ホリデイ」
ひとつの音楽との出会いが、その人の人生を変えることもあります。
たった一曲への憧憬が人を突き動かすこともあります。
ビリー・ホリデイの『アラバマに星落ちて』というアルバムに収録されている《デイ・イン・デイ・アウト》。
高校時代の彼は、コーヒーが大好きだった。
よく通っていたおいしい喫茶店があった。
店名は「ビリー・ホリデイ」。
寝ても覚めてもビリー漬け
店内でかかっている音楽は、もちろんビリー・ホリデイのレコード。
最初はコーヒー目的でこの店に通っていた。
しかし、いつしかコーヒーとともに、彼女の歌声の虜になっている自分に気が付いた。
少しずつビリー・ホリデイのレコードを集めて聴くようになった。
世間では「ビリーは暗い」「辛気臭い」といわれているが、彼は決してそんなことはないと思っていた。
たしかに《奇妙な果実》のように、ダークで深い歌も少なくはない。
しかし、それだけではないということは、たくさんのビリーの歌を聴けばわかるはず。
また、ビリー・ホリデイは夜、できれば深夜にひっそりと聴く音楽だと多くの人は主張していたが、彼はそんなことはないと思っていた。
朝から彼は朝食を食べながらビリー・ホリデイを聴いていた。
夏になると、ビーチで日焼けをしているときも、ビリー・ホリデイを聴いていた。
たとえば、《デイ・イン・デイ・アウト》。
この曲を聴いて、「暗い」、「辛気臭い」と感じる人はほとんどいないのではないだろうか。
彼は、この曲が大好きだった。
上京して社長に
ビリーが歌う歌はすべて大好きだが、やっぱり《デイ・イン・デイ・アウト》。
この曲が好きで好きで、何度も聴いているうちに、内なる熱い思いに突き動かされるかのように、ほとんど手ぶらに近い状態で彼は新幹線に飛び乗り上京した。
上京する新幹線の中、ウォークマンに流れていた曲も《デイ・イン・デイ・アウト》だったと。
上京後、幾多の仕事を経て、現在は社長となり、銀座にオフィスを構えるまでになった。
それほどビリー・ホリデイに惚れこんだ男が私の友人にいます。
一人の歌手の歌が、彼の青春を彩り、彼の情動を突き動かし、現在の彼を形作った。
そんなビリー・ホリデイと切り離すことが出来ない人生を送った男の声を「快楽ジャズ通信」で聞いてください。
元気が出てくるかもしれません。
好きで好きでたまらないミュージシャンが一人でもいれば、人生もっと楽しく生きれるはずだと思えてくるはずです。
記:2008/10/27