ダックトーンズ/ドナルド・エドワーズ

2022-08-04

ドナルド・エドワーズのドラミング

ことあるごとに、マーク・アイザというスペインのドラマーのリーダー作、『オファリング』が好きだと色々なことで書いたり言ったりしている私。

とくに、2曲目の《マチルダ》という曲の彼のドラミングの畳み掛けるようなスピード感と繊細さが大好きなんです。

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このマーク・アイザのドラミングに重量感を付加すると、ドナルド・エドワーズのようなドラムになるのではないのかと。

彼のリーダー作、『ダックトーンズ』を聞いていたら、なんとなくですが、そんなことを感じました。

1曲目はドラムソロなのですが、まあ退屈はしないんだけれども、少し我慢が必要かも。

「早く次へいってくれ~」みたいに感じるといったら嘘になりますが、この「次を知りたい」という飢餓感は、コードの響きでいえば、気持ちの「sus4(宙づり状態)」なのかもしれません。

気持ちがちょっと宙吊りになって、「次はどこへいくんだ?」「どちらに向かうんだ?」と、意識が未来の展開を模索しているような状態なのかもしれません。

だからこそ、なのでしょう。

怒涛の2曲目は、1曲目のドラムソロをキチンと最後まで聴いた報酬のような演奏で、「曲を飛ばさず、待っててよかった!」な世界なのです。

けっこうたまらん世界です。

アドリブパートは、4ビートなんですが、テーマのアンサンブルが面白い。各楽器が微妙に不一致なのに根底では一致した状態、このズレの感覚がたまらんのです。

このアルバムのオビコピーが、
「ジャズを進化させるのは、この連中だ。21世紀のジャズというより、音楽のあるべき姿を暗示するジャズがここにある。」
と、ちょっと大袈裟かもしれませんが、少なくとも、この2曲目の《The Saboteur》という曲を聴いている間は、「なるほど、そうなのかもな」と思ってしまう(笑)。

そして、5曲目のタイトル曲。
うーん、カッコイイ。
とくにドラムの細かい刻みと、ヌケの良い打音だけで酔えます。

リズムは、4ビートではなく、どちらかというと16系。
ドラムンベース的な「打」と、それがもたらす尋常ならざるスピード感がとても気持ちがいい。
そして力強いのです。

とにかくこの人のドラムは気持ちがいいよね。
特にスネアの音の気持ち良さはもう並外れているといっても過言ではない。

パワーショットの「スコーン!」と突き抜けるようなヌケの良さがにんともかんとも、忍者ハットリくんなのであります。

皮をパンパンに張ったであろう、ちょっとチューニングが高めのスネアが発する、ラテン音楽のティンバレスをも連想させるような音響効果は、こちらの萎えた気分をビシバシと叩きまくってくれます。

こういうドラミングには、アコースティックピアノよりも、エレクトリックピアノのほうがよく似合う。
打音が立った音数の多いドラムを吸収するクッションのような心地よさがあります。

アコースティックピアノだと、どうしてもカキン・コキンとアタック音が強いから、音数の多いエッジの立ったドラムの音と混ざるとけっこう聴いていて疲れてしまうかもしれない。

とにもかくにも、最高!な演奏です。

ただ、ひとつ難癖をつけるとしたら、「フェードアウトしないでくれ~!」のみです。
せっかく熱演熱演で盛り上げてくれたんだから、最後もビシッ!と終わってほしかったな、と。

もちろん、他にもマイルス・デイヴィスとビル・エヴァンスの《ブルー・イン・グリーン》や、通な人はニンマリするであろうジョー・ヘンダーソンの《ブラック・ナルシサス》も演奏されています。

メンバーは以下の通りです。

ドナルド・エドワーズ (ds)
ブライス・ウインストン (ts)
ジョナサン・クライスバーグ (g)
ロバート・グラスパー (p)
ジョン・サリバン (b)

現代的なスマートで、シャープなジャズを聴きたい人がいらっしゃれば、ドナルド・エドワーズの『ダックトーンズ』は、きっとその欲求に応えてくれることでしょう。

ちなみに、彼のことを最初に評価したのは、誰あろうエリス・マルサリスなんですね。
あのウイントン・マルサリスのお父さんです。

スタイルの違いはあれど、「良い音楽は時代を問わず」というわけですね。
オビの「音楽のあるべき姿を暗示するジャズ」というキャッチコピーが生きるエピソードですね。

記:2009/11/19


Ducktones/Donald Edwards Quintet
※ブルーマンではありません(笑)

album data

DUCKTONES (ZOO’T)
-Donald Edwards Quintet

1. Heads-N-Skins
2. The Saboteur
3. Apple Street
4. Geraldine
5. Snow Child
6. Black Narcissus
7. Ducktones
8. Blue In Green
9. For Instance

Donald Edwards (ds)
Brice Winston (ts)
Jonathan Kreisberg (g)
Robert Glasper (p,el-p)
John Sullivan (b)

2002年録音

ジャズ

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