イン・ヨーロッパ vol.1/エリック・ドルフィー

   


In Europe vol.1

チャック・イスラエル

チャック・イスラエル(イスラエルズ)のベースが好きだ。

彼はビル・エヴァンス・トリオのベーシストを務めたベーシストであったにもかかわらず、スコット・ラファロやエディ・ゴメスといった「華」のあるベーシストの影にかくれ、いまひとつ知名度がなく、演奏についてもほとんど言及されることのない人ではある。

地味といえば、地味には違いないのだが、ではそんなイスラエルズのどこが好きなのかというと、とにかく音色がセクシーなんだよね。

潤いのある低音というのかな。

彼の奏でるベースの音色は、円やかで色っぽさすら感じる。

このふくよかな音色のベースが、エリック・ドルフィーの演奏を彩るとどうなるのか?

ハイ・フライ

ドルフィーとイスラエルズの2人のデュオを聴けるのが、『エリック・ドルフィー・イン・ヨーロッパ Vol.1』の《ハイ・フライ》だ。

キャノンボール・アダレイの名演で有名なこの曲は、ピアニスト、ランディ・ウェストンのペンによるもの。

この曲ではドルフィーはフルートを吹いている。

芯の太いフルートの音色が軽やかに飛翔してゆくための足場作りを、黙々とこなすイスラエルズの職人気質的ベースワークが素晴らしい。

楽しげに、だけど適度な緊張感を保ちながら、淡々と綴られてゆく演奏。
じわじわと、静かな高揚感が内側から湧いてくる。

派手ではないが、味わい溢れる二人の会話をとことん楽しめるのだ。

この《ハイ・フライ》だけでも『エリック・ドルフィー・イン・ヨーロッパ vol.1』は聴く価値がアリなのだ。

ちなみに、この『vol.1』は、ドルフィーがアルトサックスを吹く演奏は収録されていない。

そのかわり、フルートとバスクラリネットが楽しめる内容となっている。

十八番のバスクラ、ゴッドプレス

ヨーロッパのステージでは同じみの《ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド》に、エキサイティングな《オレオ》はバスクラで。

《ハイ・フライ》と、《グラッド・トゥ・ビー・アンハッピー》ではフルートを堪能できる。

『ファイヴ・スポット』のようなアグレッシヴさ、『アウト・トゥ・ランチ』のような前衛的な要素は影をひそめた、いささか穏やかな印象を受けるアルバムだが、落ち着いた気分でゆったりとドルフィーを楽しむにはうってつけの内容だといえるだろう。

ドルフィーの代表作の5枚には入らないかもしれないが、ドルフィー好きにとってはマストアイテムの1枚といえよう。

記:2010/10/11

album data

ERIC DOLPHY IN EUROPE vol.1 (Prestige)
- Eric Dolphy

1.Hi Fly
2.Glad To Be Unhappy
3.God Bless The Child
4.Oleo

Eric Dolphy (fl,bcl)
Bent Axen (p)
Chuck Israels (b)
Erik Moseholm (b)
Jorn Elniff (ds)

1961/09/08 Copenhargen

YouTube

動画でも、このアルバムも魅力を語っています。

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