ライヴ・アット・モンタレー/ドン・エリス
変拍子と大胆な楽器編成
トランペッター、ドン・エリス率いるビッグバンドのデビュー作。
このビッグバンドの面白さは、実験精神と楽しさが同居していることだろう。
実験精神とは、大胆な変拍子の導入、インド音楽の導入、大胆な楽器編成(ベースが3台の曲もある)などがあげられる。
違和感を感じさせない変拍子
とくに変拍子に関しては、《テイク・ファイヴ》で有名な、デイヴ・ブルーベック・カルテットのアルバム『タイム・アウト』収録の変拍子曲など問題にならないほど、猛烈かつキテレツなナンバーの嵐だ。
たとえば、冒頭のMCで、「スリー・スリー・トゥー・トゥー・トゥー・ワン・トゥー・トゥー・トゥー」と聴衆にカウントの取り方を教える、その名も《33 222 1 222》という曲は、19拍子という超変態拍子のナンバーだ。
しかし、「え?これって変拍子?」と訝るほど、聴いていて違和感がない上に、難解さはない。
そして、なにより聴いていて楽しい!
それは、惜しみない拍手の嵐をおくるオーディエンスの反応からも分かる。
まるで、1966年9月の、カルフォルニア州モンタレーの熱狂的な空気がそのままディスクに封印されているかのようだ。
ちゃかぽこ、ちゃかぽこと背後で暴れまわるチノ・ヴァルデスのパーカッションの上にのっかるエスニックな雰囲気のメロディ。
ダイナミックで分厚いホーンが放つ音の塊。
どこまでも陽気で健康的なオーラを放つサウンドは、聴くだけでは勿体無い。
むずむずしてくる。
つまり、踊りだしたくなる。
といっても、リズムのとり方がよ~わからんけどね(苦笑)。
しかし、拍子の難しさなどを飛び越えて、単純に音に身をゆだねるだけでも十分に楽しめるミラクルな音楽なのだ。
やっていることは、かなりアヴァンギャルドなのだが、「前衛・イコール・必ずしも難解ではない」ということを音をもって教えてくれる。
ドン・エリスの飽くなき実験精神と、ビッグバンドならではの音の楽しさが両立している、奇跡的なアンサンブル。
心地よく聴き手の感覚を拡張してくれるのが、当時32歳のドン・エリスが率いていたビッグバンドの音なのだ。
変拍子という言葉に臆することなくトライすべし!
記:2010/02/10
album data
LIVE AT MONTEREY! (Pacific Jazz)
- Don Ellis Orchestra
1.Introduction By Jimmy Lyons
2.33 222 1 222
3.Passacaglia And Fugue
4.Crete Idea
5.Concerto For Trumpet
6.27/16
7.Beat Me Daddy, Seven To The Bar
8.New Nine
Don Ellis (tp,arr,cond)
Glenn Stuart (tp)
Alan Weight (tp)
Ed Warmen (tp)
Paul Lopez (tp)
Dave Wells (tb)
Ron Meyers (tb)
Terry Woodson (bass tb)
Ruben Leon (fl,ss,as)
Tom Scott (fl,as,saxello)
Ira Schulman (cl,as,ts)
Ron Starr (cl,ts)
John Magruder (cl.bs)
Dave Mackay (org,p)
Ray Neapolitan (b)
Chuck Domanico (b)
Frank De La Rosa (b)
Steve Bohannon (ds)
Alan Estes (ds)
Chino Valdes (per)
1966/09/18 , 10/18(#5)