アン・イヴニング・アット・ホーム・ウィズ・ザ・バード/チャーリー・パーカー

Evening at Home With the Bird
Evening at Home With the Bird

シカゴのホテルの《小さなホテル》

パーカーを聴くというよりも、ジョージ・フリーマンの“妙な”ギターを聴くためにかけているアルバムだ。

録音のせいかもしれないが、微妙に音が割れ、エコーがかかったように聴こえるギターの音と、ウネウネとした何とも形容しがたい旋律を奏でるジョージ・フリーマンのギターは、かなり異色だ。

1950年の秋にシカゴのパーシング・ホテルで、地元のバンドに客演したパーカーの演奏を収めたのが本アルバムだ。

当時出回ったばかりの家庭用テープレコーダーで録音されている。

ホテルの会場での演奏なのに、なぜ「アット・ホーム」というタイトルなのかというと、発売当時にはこの音源は、パーカーの自宅(アパート)で行われたセッションだと思われていたからだ。

ところが、1971年の『ダウン・ビート』誌によるジョージ・フリーマンのインタビューの際に、実はこの演奏はシカゴのパーシング・ホテルのパーシングボールルームで行われた演奏だということが判明した。

このアルバムが発売されたのが、1960年だから、実に11年後に、正確な録音場所が判明したことになる。

しかし、これが発売された当時は、パーカーの家で録音された音源だと思われ、そのようなアルバムタイトルが付けられてしまったため、“パーカーの家で、ある日の夕方に行われたセッション”といったタイトルのまま現在に至っているというわけだ。

このアルバムの発売当時のライナーには、“テナーサックスはワーデル・グレイと思われる”と書かれていたそうだ。

たしかにパーソネルのデータが手許に無い状態で聴けば、このクロード・マクリンの伸びやかなテナーサックスはワーデル・グレイのようにも聴こえる。

彼のサックスも、このアルバムの聴き所の一つだ。

ワーデル・グレイと間違われても仕方が無いと思われるほど、朗々と流れるように歌うプレイは、ほのぼのとした気分になれて気持ちが良い。

《小さなホテル》のアドリブでは、ソニー・ロリンズが吹いた《中国行きのスローボート》のアドリブフレーズがちらりと顔を出したりもして微笑ましい。

スタイルはビ・バップではないが、甘く太いサウンドで奏でられる彼のテナーもなかなか味わいがあって良い。

そんな、ほんわかしたテナーなだけに、パーカーのソロがとても近代的に聴こえてしまうのは私だけだろうか?

そう、このセッションにおけるパーカーのプレイは、破綻の無い骨格のしっかりとしたプレイで、淡々とした演奏にもかかわらず、実にバランスの取れたプレイをしている。

あまりクリアとは言えない録音状態にもかかわらず、彼の芯の通った音は良く鳴っている。

ライブとはいえ、たとえば『バード・イズ・フリー』で聴ける熱狂さは感じられず、腰の据わった落ち着いたプレイをしているパーカー。それなのに、アドリブの冴えといい、構成のまとまりといい、非常に完成度の高いアドリブを彼は吹いていると思う。

そう、パーカーはとても素晴らしいプレイをしているのだ。

にも、かかわらず、ジョージ・フリーマンの変態(?)ギターの前では、そんなパーカーのプレイですら霞んで聴こえてしまうのだ。

ヘンな言い方だが、パーカーの申し分無いソロ・プレイは、ジョージ・フリーマンのキレ気味のプレイの前では、“普通過ぎる”ように聴こえてしまうのかもしれない。

《小さなホテル》での彼のプレイは、“まとも”なので、それほど特筆すべき点はないのだが、「ファイン・アンド・ダンディ」のギターソロがすごい。

まるで、一本の弦を上から下までこねくり回しているような、言葉では形容不可能なすごいスピード感とフレーズを「びゅんびゅん」と飛ばしまくっているのだ。

これは、すごい。

なんだかよく分からないけど、すごい。

ハーモロディックなギタリストのジェームズ・ブラッド・ウルマーも、ジョン・ゾーンの曲を演奏したりもしているマーク・リボーも一瞬色あせて聴こえるぐらいの変わりっぷり。

初めて聴いたときは、そのギターのプレイに思わず仰け反り、次いで、どう反応してよいか分からず、思わず大笑いをしてしまったほどだ。

彼の変態ギターの前ではパーカーですら霞んで聴こえてしまうあたり、いかに彼のギターが異色で突出しているかが分かろうものだ。

ジョージ・フリーマンというギタリスト、他ではどういう活動をしていたギタリストなのか、データ不足で分からないが、なんだか凄い人もいたもんだというのが、このアルバムを聴いたときの私の感想。

冒頭ではジョージ・フリーマンのギターを聴くアルバムと書いたが、クロード・マクリンの悠々たるテナーも楽しめる上に、バランスの取れたパーカーのプレイも楽しめるアルバムなので、パーカーの音源の中では、異色な編成ながらも、なかなか楽しめる好アルバムだといえそうだ。

記:2002/10/15

album data

AN EVENING AT HOME WITH THE BIRD (Savoy)
– Charlie Parker

1.There’s A Small Hotel
2.These Foolish Things
3.Fine And Dandy
4.Hot House

Charlie Parker (as)
Claude McLin (ts)
George Freeman (g)
Chris Anderson (p)
Leroy Jackson (b)
Bruz Freeman (ds)

1950年秋

ジャズ

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