人生の二つの扉/キース・ジャレット

      2021/02/14

進むべき方向はどちらだ?!

キース・ジャレットの初リーダー作はピアノトリオだ。

チャールス・ロイド(ts)のグループに在籍中の当時22歳のキースが録音したアルバムで、レーベルはアトランティックレコード傘下のヴォルテックス・レコード。

ベースはチャーリー・ヘイデン、ドラムスはポール・モチアン。

日本盤のタイトルは「2つの扉」となっているが、正確には「2つの出口」。

どちらの出口から「外」に出ようかな?ということなのだろう。つまり、まだキースが認識している自分自身の立ち居地は、まだ外には出ていない「内」に閉じこもった状態であるという認識だったのかもしれない。

クラシック、フリー、フォーク、ゴスペル、ソロピアノなどなど、様々なジャンルを横断し、「キース・ジャレットの音楽」を、旺盛な活動で築き上げてきた彼ではあるが、まだこの時期は自分が今後進むべき道を思いあぐねていたのだろう。

それが、このアルバム収録の曲のタイトルとなり、また、そのナンバーがアルバムのタイトルとなり、このアルバムが持つテイストを象徴するかのような作品となった。

キースのオリジナルあり、スタンダードありと、まだやりたいことが固まりきっていないような印象を受ける。

このトリオの方向性が定まってくるのは、1年後のライヴアルバム『サムホェア・ビフォー』あたりからではないだろうか。


サムホエア・ビフォー

しかし、それでも、ヘイデンにモチアンという名手と絡めば、才人キースのこと、きちんと聴ける作品を作ってしまうところがサスガ。

ピアノの演奏や、オリジナル曲には、じゃっかの固さが感じられることは否めないが、後年、ゲイリー・ピーコック(b)とジャック・ディジョネット(ds)とともに結成したピアノトリオ「スタンダーズ」でも放たれる「キース節」の萌芽のようなフレーズは、いたるところで散見されるので、『ケルン・コンサート』や「スタンダーズ」などキースを代表する定番作品はチェックしているものの、なにしろ多作なキースのことだから、次は何に触手を伸ばそうかと迷っている方には、是非耳を通していただきたい逸品だ。

「あのキースにも、こういう時期があったのね」と思わせる、貴重な記録ともいえる。

記:2019/05/11

album data

LIFE BETWEEN THE EXIT SIGNS (Vortex Records)
- Keith Jarrett

1.Lisbon Stomp
2.Love No. 1
3.Love No. 2
4.Everything I Love
5.Margot
6.Long Time Gone (But Not Withdrawn)
7.Life Between the Exit Signs
8.Church Dreams

Keith Jarrett (p)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds)

1967/05/04

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