フォー・ミュージシャンズ・オンリー/ディジー・ガレスピー、スタン・ゲッツ、ソニー・スティット
2022/04/24
高速テンポの中での存在感
「あれ以上速く吹くことは、いくらなんでもできなかったと思う」
後年、スタン・ゲッツが述懐している《ビ・バップ》。
これは、ディジー・ガレスピーと、ソニー・スティット、そして、ゲッツが丁々発止にやりあったセッションだ。
ヴァーヴの『フォー・ミュージシャンズ・オンリー』に収録されているこの演奏は、まるで火花が飛び散る熱いセッション。
とにかく、テンポが速い。ベースもドラムも体力的に大変だったろうに。
猛スピードで突進するガレスピーとスティットは、戦闘的なアドリブで鬼気迫るものがあり、特にディジーは我々からしてみれば「ハイノート・ヒッター」という「瞬発力の人」というイメージもあるかもしれないが、高音かつ複雑なフレージングを高速で繰り出しつつも、まったくブレない安定感にももっと注目すべきだろう。
さらにゲッツのプレイは、流麗でメロディアス。
このようなテンポにおいてさえも、熱いがトゲトゲしい熱さではなく、せいぜいが、ウォームという言葉が似合うような温度だ。
ゲッツのアドリブのパートになると一瞬テンポの速さも忘れてしまうほど。
これは結構スゴいことだと思う。
緊急事態に直面しても、あわてずに的確にすべき処置を右から左へと落ち着き払って裁いてゆくベテランの仕事っぷりを見ているようで、頼もしい。
ヴァーヴのオーナー、ノーマン・グランツお膳立てのセッションで、人選に関しては水と油の組み合わせのようにも見えるが、 見事なマッチングを見せた。
火の中に飛び込んでも、ゲッツはゲッツ。
自分流を通し、自分流で周囲を納得させてしまったという、ある意味、単純な力技を発揮しただけなのだが、彼のスムースなトーンを聴いていると、とても力技には感じないところもゲッツならではの凄さなのだろう。
記:2006/06/10
album data
FOR MUSICIANS ONLY (Verve)
- Dizzy Gillispie,Stan Getz,Sonny Stitt
1.Bebop
2.Dark Eyes
3.Wee (Allen's Alley)
4.Lover Come Back To Me
5.Dark Eyes
Dizzy Gillispie (tp)
Stan Getz (ts)
Sonny Stitt (as)
John Lewis (p)
Herb Ellis (g)
Ray Brown (b)
Stan Levey (ds)
1956/10/16