レッド・ガーランド 秋空の「憂い」

   

text:高良俊礼(Sounds Pal)

レッド・ガーランド

レッド・ガーランドは「ジャズ・ピアノの至宝」だ。

50年代の“幸せな”モダン・ジャズ全盛期を象徴するかのような、正に「花も実もある」プレイスタイルは、聴いて一発で「あ、カッコイイJAZZピアノだね」と、誰が聴いてもハッキリと印象に残る素晴らしいものであった。

ゴキゲンなグルーヴを醸し出すブロック・コード。

「宝石を転がすよう」と形容される右手の清楚なアドリブ・ライン。

マイルス・デイヴィスの初期クインテットの例を出すまでもなく、彼のピアノが入ると場が華やぎ、バンドの演奏そのものが格調高いものに生まれ変わった。

そんな豊かな才能と確かなテクニックを持っていたガーランドだが、ハード・バップ・ブームの終焉と共に、次第にシーンから遠ざかってしまう。

ホエン・ゼア・アー・グレイ・スカイズ

このアルバムは1960年録音の、プレスティッジでの最後のリーダー作。

ピアノトリオ編成で、バラードやミドル・テンポ以下のスタンダード曲をしみじみ聴かせてくれる、ガーランドの作品の中でもちょっと気色の違う憂いが漂う作品。

個人的には50年代の“バリバリに弾きまくってハッピーなフィーリングを振りまくガーランド”は言うまでもなく最高だと思うが、このアルバムならではの、どこか秋の曇り空を思わせるようなしんみりした空気もまた格別だ。

冒頭の《サニーボーイ》での静かに語りかけるようなピアノや、古いスタンダード・ナンバー《聖ジェームス病院》での哀しさを秘めた小粋なプレイ、そしてまるで上質な恋愛映画のようなラスト・ナンバー《マイ・ブルー・ヘヴン》まで、静かに溢れる気品に思わずウットリしてしまう。

決してジャズ史を揺るがすような名盤、傑作の類ではないが、多くの人の心に「いいね」というささやかな幸せをきっと芽生えさせる作品だと思う。

実際私は、このアルバムを聴いてから、ガーランドそのものがグッと好きになった。

記:2014/10/11

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●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル

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