下駄派3
下駄を新調した。
いつもなら、毎年4月には下駄を取り替えているのだが、今年はすっかり忘れていて、5月になってから下駄の歯がほとんど無いことに気がついた。
驚いたのは、右足の歯と、左足の歯の摩耗具合が、今年はかなり違っていたこと。
いつもならば、ほぼ左右ともに均等な減り具合なのだが、昨年から今年にかけて履いていた下駄は、右足の歯の摩耗が激しかった。
ウッドベースの影響かな、と思った。
ちょうど昨年の5月にウッドベースを購入したことと関係があるのかもしれない。
私はエレキベースもウッドベースも右の肩に担いで移動しているが、昨年にウッドベースを購入して以来、ウッドベースを担いで出歩くことが多くなったので、右側にかかる負担が脚に、そして下駄の歯にまで及んだのだと思う。
それほど、ウッドベースを担いでの移動は大変なんだな、と思った。
下駄の木が著しく摩耗するほどなのだから、自分の身体、ことに骨にかかる負担も少しは考えなければいけないなと思った。
新しい下駄を買ったのは、いつもの履物屋。
もうすっかり顔馴染みになっていて、私の顔を見るなり、未完成の下駄の板に鼻緒を通し、素早く私の足にフィットする下駄を作ってくれた。
この作業の素早いこと、素早いこと。職人の技を惚れ惚れとしながら見入っている私だった。
ここで下駄を買うと、いつも「奥さんにどうぞ」と、財布につけるような小さな鈴をくれるのだが、今回もまたくれた。
代金は、いつも3,850円のところ、50円を惹いてくれて3,800円。
これを丸々一年間履きまくって、履きつぶすのだから安いものだ。
きっと、来年の今頃もまたこの店で新調するのだろうな、と思いつつ、店を後にした。
もちろん、出来たてホヤホヤの下駄に履き替えて。
新しい下駄と、アスファルトが奏でる「カランコロン」という乾いた音は、いつ聞いてもとても気持ちが良いものだ。
下町の商店街の中、たくさんつるされた鯉幟(こいのぼり)を眺めながら、カラン、コロン。
家に帰ったら柏餅をたくさん食べようと思った。
記:2002/05/06