ハロルド・イン・ザ・ランド・オブ・ジャズ/ハロルド・ランド
いまひとつ地味
クリフォード・ブラウン=マックス・ローチのクインテットのメンバーの一員だったテナーサックス奏者、ハロルド・ランド。
ブラウニーとの共演を聴けば、ハロルド・ランドのプレイは、非常に丁寧にフレーズを組み立てている。
手を抜かない。
マジメだ。
しかし、彼のサックスはいまひとつ地味さが拭えないことも確か。
ブラウニー(クリフォード・ブラウン)のトランペットは印象に残っているけど、ハロルドのサックスって、じつは正直あんまり覚えてないんだよねぇ。ブラウニーと比べると、なんか印象薄くない?
そう感じている人も多いのでは?
ま、かく言う私もそうなんだけど(苦笑)。
ブラウン=ローチのコンボでは、どうしてもブラウニーのラッパやローチのドラムに耳がいってしまうのは致し方ないことなのかもしれない。
どうしても、このコンボでは陰の存在になりがちなランドのテナーだが、『ハロルド・イン・ザ・ランド・オブ・ジャズ』を聴けば、彼の魅力をしっかりと味わえる。
聴きどころ多し
やはり手堅いです、この人。
無骨な男っぽさとでもいうのかな。
決してフェイクはしないし、派手なプレイでリスナーの気を引こうだなんて色気は微塵もなし。
職人ならでの生真面目さで、手を抜かず、媚を売らず、ただひたすら自分のジャズを表現している。
テナーサックスならではのコクのある音色による、懐の深い表現。
アップテンポの《スピーク・ロウ》では、スピード感のある破綻のないプレイ。
《ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ》では、ちょっと面白いテーマの崩し方。
「ほとんど《ラヴ・フォー・セール》じゃん!」な、《グルーヴヤード》は、しかし、原曲スタンダードにはない重さとアーシーさが加味されている。
《スマック・アップ》の楽しげなテーマも、丁寧にキチンと吹こうとする姿勢がかえって微笑ましく、好感が持てる。
トグロをまくように畳みかける瞬間にもゾクッとくるし、ランドのヒートアップフレーズに思わずフランク・バトラーも煽られたドラミングをする箇所もあるほど。
生真面目なテナー奏者
いずれにせよ、ハロルド・ランドという生真面目なテナーサックス奏者の魅力を味わえるに充分なアルバムだが、最初は「ながら」で聴かないこと。
ボーッとしていると、心地良い4ビートジャズとして、耳の穴をスルスルと通り過ぎていってしまい、何も残らない危険性がある。
ただし、彼のテナーサックスをキチンと追いかければ、すごく魅力のあるテナー奏者だということがよく分かるはず。
ジャズに対する真摯な姿勢が音になって表れている。
真面目に、黙々と丁寧に仕事をこなしているわりには、職場で目立たない人っているじゃないですか?
しかし、そんな人と、たまたま社員旅行や忘年会などで同席した際に会話をしてみると、意外と味のある面白い人だと気がついたことってありませんか?
今まで持っていたイメージが、ちょっとしたキッカケで覆され、一気に親近感が湧く。
こういう経験のある人っていると思うけれども、ハロルド・ランドがまさにそういうジャズマンではないかと思うのだ。
エルモ・ホープとカール・パーキンス
ちなみに、このアルバムにはピアニストのエルモ・ホープの名前がクレジットされているが、実質的にピアノを弾いているのはカール・パーキンスのみ。
ホープの仕事はアレンジ面のようだ。
《リディアズ・ラメント》のテーマ部におけるメランコリックなアレンジなどは、いささか凡庸ではあるが、ホープのペンによるものなのだろう。
記:2005/07/03
album data
HAROLD IN THE LAND OF JAZZ (Contemporary)
- Harold Land
1.Speak Low
2.Delirium
3.You Don't Know What Love Is
4.Nieta
5.Grooveyard
6.Ladia's Lament
7.Smack Up
8.Promised Land
Harold Land (ts)
Rolf Ericson (tp)
Carl Perkins (p)
Leroy Vinnegar (b)
Frank Butler (ds)
Elmo Hope (arr)
1958/01/13 #1,6,7,8
1958/07/14 #2-5