モロッコの鬼才、ハッサン・ハクムーン
text:高良俊礼(Sounds Pal)
グナーワ モロッコ
北アフリカはモロッコに「グナーワ」という伝統音楽がある。
これは、かの国に古くから伝わるダンス・ミュージック。
敬虔なイスラム教徒が多いモロッコでは、イスラム神秘主義思想に基づく宗教音楽が独自の発展を遂げてきた。
有名なところでは、ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズが魅せられ、テクノDJタルヴィン・シンなんかが採り上げた“ジャジューカ”なんかがある。
ジャジューカは、吹きものや打楽器が織り成すオーケストレーションが圧巻で、極めて祭事色の強い音楽だが、この“グナーワ”は、かつて北アフリカに奴隷として連れてこられた黒人音楽(精霊信仰)の要素が強く、そのためパッと聴いた印象はアフリカの黒人音楽かと思われるほどだ。
ハッサン・ハクムーン ライヴ
さて、本日ご紹介するのは、そんなグナーワを世界的に有名にした第一人者、ハッサン・ハクムーンが、世界のあちこちで行ったライヴから、選りすぐりのテイクを選んだライヴ・アルバム『スピリット~ライヴの軌跡』。
幼い頃よりストリート・ミュージシャンとして、ゲンブリ(ベースみたいなぶっとい三味線みたいな楽器です)を片手に唄い踊り、14歳の頃には学校もとっとと辞めてプロ・ミュージシャンとして国内で活躍していたハッサンは、その後欧米から注目を浴び、現在はアメリカはニューヨークを拠点に世界中を飛び回っているというから、その実力は折り紙付(!)。
彼の音楽、そのまま聴いても十分に楽しめるし、その少ない音から繰り出される無限のビートの広がりを深く堪能できるが、例えばをサンプリングして後期コルトレーンの音とかを混ぜて、ハウス系のビートにかぶせてみたらどうなるだろう?
彼が奏でるゲンブリが繰り出す、原初の衝動に溢れたビート、その引力がもしかしたら未知のとんでもない音楽を生み出してしまうかも知れない。そんな空想を楽しんでいる。
記:2014/09/26
text by
●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル)