ヘッド・ハンターズ/ハービー・ハンコック
2022/07/10
《カメレオン》以外の演奏も良い
このアルバムの看板曲《カメレオン》は、ぶっ太い音色のシンセベースのリフが強烈なインパクトではあるが、これ一発で聴く(踊る?)ための曲という感じもしなくない。
後年のヘッドハンターのライブや、ジャコ・パストリアスとハンコックとの共演(競演)を聴いてしまうと、いかにも単調な気がする。
もちろん、シンセベースの執拗なリフレインが心地よいトランス効果を誘い、その心地よさは否定しない。
しかし、やればもっと爆発力のある実力派プレイヤーたちが、神妙に力を5割にグッとセーブして演奏する禁欲さ加減は、それはそれである種下半身にくるモヤモヤ感はあるにせよ、もっとドカーン!とやってくれてもいいじゃないの? という欲求不満を感じることもたしか。
そんな私にとっての目玉は、《スライ》だ。
これはすごい演奏だ。
ポール・ジャクソンの太くて縦横無尽なベースがとくにすごい。
しかも、後半になればなるほど、演奏も白熱!
単調かつ執拗にパターンがリフレインされる《カメレオン》も、それはそれで魅力はあるが、やはり、抑え切れないミュージシャン魂が、溢れんばかりに開放されてゆく《スライ》こそがこのアルバムの目玉なんじゃないかと私は思っている。
ファンク路線のハンコックのキャリアがスタートした記念すべき1枚。
枕元にたった日蓮上人のお告げに従ったら、こんなにもヒットしちゃったという逸話つき。
記:2009/05/24
album data
HEAD HUNTERS (Columbia)
- Herbie Hancock
1.Chameleon
2.Watermelon Man
3.Sly
4.Vein Melter
Herbie Hancock (key)
Bennie Maupin (sax)
Paul Jackson (el-b)
Harvey Mason (ds)
Bill Summers (per)
Oren Waters (vo)
1973年