ジャズは不良の音楽だ!~ホレス・パーランの『アス・スリー』

   

text:高良俊礼(Sounds Pal)

これこそジャズですよ!

ジャズって一言でいっても色んなスタイルがあるが、この、ホレス・パーランのアルバムを聴くと、格別「くぅ~、ジャズだねぇ!!」と、思わずポロリとつぶやいてしまう。

「オレは黒いのしかやんねぇ!女コドモはすっこんでろい!!」と、言わんばかりの、ざっくばらんにアーシーなピアノ。

ドスの聴いた重いフレーズ、スタートボタンを押すやいなや立ちこめる、都会の夜のキケンな香り。

ジャケットには写ってないが、見事に禿げ上がった頭頂部を隠しもせず、ダンディな口ヒゲを生やして、ダークスーツをビシッと着こなすパーランのルックスも、実にワルい。

これこれ、これこそジャズですよ。

パンク小僧だった私

個人的なことではあるが、ジャズを聴く前はバリバリの「パンク小僧」だった私。

もちろん80年代のUSハードコアなどを中心に聴きながら、戦前ブルースの「パンクさ」に惚れたのをきっかけに、ブラック・ミュージックを聴くに至った訳だが、その時に「カッコイイ音楽とそうでない音楽」を振り分けるために使っていた基準が「パンクであるかどうか」だった(今もそうだ)。

今もってジャンルとしての「パンク」の細かい定義には疎い私だが、とにかく音に小細工をせず、強烈なインパクトがあって、自分だけのルールに忠実で、結果として潔い“不良っぽさ”が感じられれば、私の中でそれは「パンク」である。

どうだい、ジャズって不良の音楽だろ?

ホレス・パーランの『アス・スリー』は、正に「パンク」なアルバムだ。

というよりも、先述した「パンクの定義」を、完璧に満たしていると言っていい。

編成はシンプルなピアノトリオで、楽曲も特に奇をてらった様子などないストレートなブルースが多いし、エフェクトなんかは施されていない剥き出しの音が、ひとつひとつ「ビシッ!ドスッ!ゴリッ!」と「必殺の一撃」を繰り出している。

細かいところに至るまで執拗に重く、そして粘るこの演奏には、無駄なものなどひとつとして見当たらない。そして華美な要素など何ひとつないが、それがまた「筋の通った男のオシャレ」でもある。

「どうだい、ジャズって不良の音楽だろ?」と、カッコ良く黒光りする頭頂部を煌かせながらパーランは言う。

いや、言ったような気がする。

「男のオシャレっす、パーラン先輩!」

無人の部屋でスピーカーに向かって、私は思わずそう言った。

記:2014/10/11

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●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル

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