アイル・キャッチ・ザ・サン/ソニー・クリス

      2023/01/01

各楽器奏者の個性が見事に融合

粒立ちのハッキリとした明快なハンプトン・ホーズのピアノが良い。

ソニー・クリスのメリハリの効いたアルトとは非常に相性が良いと思う。

モンティ・バドウィグのベースは、暖かくアタックが丸く、そして太い。

安定したライン、心地よい鼓動。

素晴らしい「縁の下の力持ち」ベースだと思う。

少し後ろに引っ込んで聴こえるが、軽妙に細かいサポートを粋にこなすシェリー・マンも好サポート。

つまり、このアルバムはリズムセクションが良いのだ。

秀逸なリズムセクションにも恵まれて、クリスはなんの迷いもなく、ストレートなアルトサックスを聴かせてくれる。明るく澄んだアルトサックスの音色で奏でられるフレーズが、なぜか泣ける。

ここでのクリス節は、日本人の琴線に触れる要素がたっぷりなのだ。

私はソニー・クリスのリーダー作を10枚ぐらい持っているが、ハッキリ言って彼の明快なサックスの音色と、フレージング、そして、勢いのある演奏が聴ければ、本当にどのアルバムでもいいや、と思っている。

あとは、その日の気分や体調で、聴きたい曲が変わるだけで、その曲の入っているアルバムが、その日の愛聴盤となるわけだ。

最近の気分は、ここしばらく『アイル・キャッチ・ザ・サン』。

なぜかというと、タイトル曲が大好きだから。

三拍子の曲。

イントロを聴くと、マイルスの《いつか王子様が》を一瞬思い出すが、気にしない、気にしない。

テーマの頭の部分が、《ムーン・リヴァー》を彷彿とさせるが、気にしない、気にしない。

とても良い曲なのだから、こういった細かいことは、気にしない、気にしない。

ほんのりと陰影を絡ませながら、快調に吹きまくるクリスは、とても気持ちが良さそうだ。だから、こちらも良い気分になってくる。

ただ、ちょっと残念なのがハンプトン・ホーズのピアノソロ。

曲の調子を今ひとつ掴みきれず、もう少しで良いノリになって盛りあがるかな?というところで、ピアノソロが終わってしまうのが何とも残念。

しかし、そんなことを差し引いても、素晴らしい曲、そしてクリスの気持ちの良い速度で滑らかに走るアルトを聴ければ、私はそれで大満足だ。

なんだか、この曲を聴くと、勇気や希望が沸いてきませんか?

ジャケットから受ける印象は地味かもしれないが、実際は、アルバムの音を耳にした瞬間、サーッと視界が広がってゆく心地よさを感じる。

《アイル・キャッチ・ザ・サン》。
良いタイトルだ。
ソニー・クリスのプレスティッジ最後の録音作品だ。

記:2002/08/12

album data

I'LL CATCH THE SUN (Prestige)
- Sonny Criss

1.Don't Rain On My Parade
2.Blues Sunset
3.I Thought About You
4.California Screamin'
5.Cry Me A River
6.I'll Catch The Sun

Sonny Criss (as)
Hampton Hawes (p)
Monty Budwig (b)
Shelly Manne (ds)

1969/01/20

 - ジャズ