オン・ザ・コーナー/マイルス・デイヴィス
大好きなアルバムです!
眩暈がするほどのファンクなグルーヴを生み出すベースに、ハットの連打やクラップの挿入は、まるで、いわゆる「人力テクノ」とでも言うべき心地よさを感じ、つんのめった感じのせわしないリズムと混沌としたサウンドは、最初の一音から確実に異界へと誘われ、重層的でごった煮なサウンドの肌触りとは裏腹に、妙に冷めてクールな感覚も感じられ、単なるノリノリのビートに終始することを嫌悪するかのように、マイルスは敢えて、タブラやシタールといったおよそジャズやファンクとは無縁な楽器を混入させることによって「単なるファンク」という一言では括れない異化作用を促進させ、では、肝心なマイルスのラッパはどうなのかといえば、フレーズがどうというよりも、彼の放つ重く捻れた一音一音は、さながらサウンド全体の触媒の役割を果たしているかのようだ。
その試みの面白さと、サウンドの塊としての一筋縄ではいかない肌触りは、録音より30年の歳月を経た今となっても、奇妙に新鮮で比類の無いサウンドとして、ジャズファンよりも、むしろファンクやヒップホップのファンに親しまれているような気がする。
好きです、オン・ザ・コーナー。
『カインド・オブ・ブルー』、『ビッチェズ・ブリュー』とともに、マイルスのアルバムでは、最初の数音を聴いただけで、アルバムジャケットに思わず頬ずりをしてしまいたくなった数少ない3枚の中の1枚。
記:2002/08/07
album data
ON THE CORNER (Columbia)
- Miles Davis
1.On The Corner/New York Girl~Thinkin' One Thing And Doin' Another~Vote For Miles
2.Black Satin
3.One And One
4.Helen Butte~Mr. Freedom X
Miles Davis(tp)
Dave Liebman (ss)
Carlos Garnett (ss,ts)
Herbie Hancock (key)
Chick Corea (key)
Harold Williams (elp)
John McLaughlin (g)
David Creamaer (g)
Michael Henderson (b)
Jack DeJohnette (ds)
Billy Hart (ds)
Don Alias (per)
Colin Walcott (sitar)
Badal Roy (tabla)
1972/06/01,06 & 07/07