アタマにくるJAZZ本『ジャズ構造改革~熱血トリオ座談会』後藤雅洋+中山康樹+村井康司
2022/05/20
う~ん、一言「アタマにくる」。
なにがって? この本です、この本。
先日発売されたばかりの『ジャズ構造改革~熱血トリオ座談会』です。
ジャズ評論家の中山康樹氏と村井康司氏、ジャズ喫茶「いーぐる」マスターの後藤雅洋氏による対談集だけれども、ジャズサイトをやっている者としては、耳に痛い言葉ばかりだ。
のっけから、「ジャズの個人サイトのつまらなさ」から始まっているんだよね。
ちょっと引用(あるいは要約)すると、
・ほとんどのジャズサイトが似たりよったり
・取り上げるアルバムやミュージシャンも同じ
・「名盤コーナー」を設けたりと、個人のページなのに職業評論家がやっていることをやっている
・楽しそうじゃない、苦しそう、読むほうも苦しくなってくる
・安易なコピー&ペーストで文章修行?
・「ジャズ雑誌ごっこ」「評論家ごっこ」
・既存の視点、切り口しかアップされていない
・独自の視点や切り口が無い
・仮想空間でしか通用しない文章→説得力がない
……と、まだまだ続くが、このへんで。
とにかく、かくの如く、ジャズの個人サイトに対して言いたい放題。
で、わが身に振り返って考えてみると、
……うん、そのとおりです(笑)。
だ・か・ら、
図星なだけにアタマにくる。
ジャズサイトの運営者よ、このように、ジャズオヤジたちに好き放題に放言させておいて良いのか?!
たしかに、多くの個人ジャズサイトに関しては、彼らの指摘どおりなのかもしれない。
しかも、その指摘がもっとも当てはまるのは、じつは、このサイト「カフェ・モンマルトル」だったりするかもしれないのだ。
だってさ、正直に告白すると、ジャズのコンテンツを作った最初の動機は「評論家ごっこ」だったし(笑)。
ホームページを持つちょっと前から、自分のバド・パウエル観なんかを書いたテキストをジャズ好きの友人にメールで送りつけてたりしたからね(笑)。
さらに、「名盤コーナー」のようなこと、メルマガでやってましたもん、昔(笑)。
「初心者にジャズを啓蒙しよう!」というオセッカイな動機で、「ピアノ編」と「モダンジャズ」に分けて。
邱永漢氏のサイト上での連載も、そういったノリだしなぁ。
それに、私のレビューほど「王道」な路線はないと思う。
そもそも独自の切り口を打ち出していないし、世間的に定着した最大公約数的評価を、自分の言葉で書いていることのほうが多いし、取り上げるアルバムも名盤と呼ばれる無難なものがほとんどだ。
うーん、彼らの言っていることが、いちいち自分のサイトに当てはまるのが悔しい。
たしかに、この本で言及されていることは、私を含めジャズサイト運営者にとっては耳に痛いことが多いと思う。
しかし、言っていることは悔しいけれども当たっているんだよね。
そして、さすがにジャズ評論の第一線で活躍している人たちなだけあって、個人サイト以外にも、CD業界や、昨今のジャズ雑誌についての考察、分析には鋭いものがある(というか、毒舌だねぇ、皆さん)。
「アタマにくるけど、目からウロコ」なことも確かなのだ。
だから、サイト運営者はもとより、ジャズに興味がある人は必読の書には違いない。ただし、危険な必読書、ね(笑)。
良薬口に苦しというが、たしかに、本書で語られている辛辣なトークは、口当たりは苦いかもしれないが、受け止め方次第では、良薬となることだろう。
ジャズの文章を書いている人にとっては、プロ・アマ問わず、爆弾が潜んでいる可能性の高い本かもしれないが、だからこそ、一気に読んでしまう内容なことも確か。
もし、ジャズのサイトを運営している人がいれば、読書中に感じたムカムカを是非、前向きなエネルギーに転じて、彼らジャズオッサンたちをギャフンと言わせてやろうじゃないの。
「ジャズの個人サイトは皆同じ? 冗談じゃねーぜ、俺のサイトは一味違うぜ!」
「個人サイトがつまらない? いったいどこを見て言ってるのかねぇ?」
堂々とこう主張できるサイトが一つでも増えんことを。
もちろん、「カフェ・モンマルトル」も頑張りまっせ!
ちなみに、ジャズサイトの言及以外では、「名盤をもう一度見直そう」という提案と、「ウイントンから見るジャズ史」が面白かった。
記:2006/02/25