カイザー/ライアン・カイザー
2021/02/24
軽くてさくさく聴きやすいが……
ライアン・カイザーの音質は軽い。
しかし、楽器コントロールは大したものだと思う。
機動性があり、小回りが利く。
とても器用に吹く。
ただし、音に厚みはない。
アタック感も少々弱い。
それゆえ、腰の無いトランペットに聴こえるのはいた仕方のないこと。
あるいは、痩せ気味な録音のせいで、そう感じてしまうのかもしれないが、演奏に対してのガッツの無さはどうしたことか。
このような音色で、このような意気込みでクリフォード・ブラウンの曲を演奏されても、せいぜいが、ブラウニーの水割りがいいところ。
ブラウニーが遺した演奏に敬意は払っているのだろうが、ブラウニーの足跡をなぞっているだけのように感じる。
少なくとも、クリフォード・ブラウンというトランペットの巨人に挑んでない。
やったことを再現し、演奏を“こなしている”だけ。
もっと言ってしまえば、偉大なジャズジャイアントの一人、クリフォード・ブラウンの遺影を前に腰が引けてしまっている。
引けた腰を、テクニックでカバーしようとしている。
ゆえに、音にガッツが感じられないのだ。
ブラウニー好きは、聴く必要なし。
言うまでも無く、オリジナルのほうが数倍いい。
コピーを何度も重ねると、重ねた回数に比例して色あせてくる。
このアルバムは、クリフォード・ブラウンのアルバムを何十回もコピー機にかけた挙句に仕上がった薄味の音楽。
楽器のうまさだけではジャズにならない好例ともいえるアルバムといえる。
せっかくのテクニックを持ったライアン・カイザーなのだから、他のアルバムに期待。
記:2008/06/04
album data
KISOR (Videoarts)
- Ryan Kisor
1.Dahoud
2.Delilah
3.Cherokee
4.I Remenber Clifford
5.Jordu
6.Parisian Thoroughfare
7.Sandu
8.Valse Hot
Ryan Kisor (tp)
Peter Zak (p)
John Webber (b)
Willie Jones III (ds)
1999/07/30