リー・モーガン vol.2/リー・モーガン
若き才能をじゃんじゃん録音!
クリフォード・ブラウンの死と入れ替わるようにシーンに登場した若き天才トランペッター、リー・モーガン。
彼の溌剌としたプレイをじゃんじゃん録音しちゃおうと目論んだブルーノートのオーナー、アルフレッド・ライオンは、文字通りじゃんじゃん録音した。
このアルバムも、ハンク・モブレイがリーダーの『ハンク・モブレイ・セクステット』の1週間後に録音されている。
しかし、プレイ面では文句なしのモーガンだが、作曲面の才能は、まだこの段階では開花していない。
というよりも、そもそも作曲の訓練や経験が不足していたのだろう、初期の吹き込みの曲は、別な人間が担当している。
ブルーノートらしいアルバム作り
この2枚めのリーダー作も、ベニー・ゴルソンとオーウェン・マーシャルが担当。
なぜ、プレイ面だけでなく、作曲にもこだわるのか。
ここがブルーノートというレーベルの面白いところなのだが、他のレーベルならば、凄いプレイヤーを見つけると、ジャムセッション的にスタンダードやらブルースなどを「一丁あがり!」的にどんどん録音してしまうことが多い。しかし、このレーベルは、リーダー作を吹き込む際には、自作曲を提出させていたのだ。
演奏だけではなく、しっかりと後世に残る「作品」を残そうという考えが強かったのだと思う。
だから、ジョン・コルトレーンは、ブルースの《ブルートレーン》や、オリジナルナンバーの《モーメンツ・ノーティス》を作曲してレコーディングに臨んでいるし、他のジャズマンも同様だ。試みにリーダー作の曲のクレジットを見てみるとよい。作曲者にリーダーの名前がクレジットされていることが多いと思う。
曲作りの上手かったホレス・シルヴァーやハンク・モブレイらが、このレーベルの看板的なジャズマンというのも納得のいく話だ。
それほどまでに、ブルーノートは「ジャズマンの作曲」を大事にしたレーベルだということは頭の片隅にとどめておいてもよいだろう。
ゴルソンの名曲
ベニー・ゴルソンの名曲《ウィスパー・ノット》。
テーマのアンサンブルの後に、ミュート音で飛びだすモーガンの背景には、キッチリと練りあがったブラスアンサンブルが蜂のように舞うモーガンのトランペットを彩る。
この冒頭の1曲で、このアルバムの評価は決まり!
本音を書くと、ちょいと地味
……と、ここまではオフィシャル的なアルバム評。
以下は、私個人の私的感想を書くと、正直、他の諸作と比べると、あまりリー・モーガンの印象が薄いんだよね。
ま、デビューしたてだから、仕方ないし、
それでも、10代後半のレコーディングということを考えれば、大したラッパっぷりなのだが。
もっと、ラッパの音色に艶やきらびやかさが生まれるのは、もう少し後の話。
冒頭の《ウィスパーノット》の“名演”で知られるアルバムだが、この《ウィスパーノット》は、「名演」というよりは、「名曲」、いや、「名アレンジ」というべきでしょうね。
どちらかというと、モーガンのプレイよりも、ゴルソンのアレンジのほうが印象深いからだ。
もちろん、物憂げにミュートトランペットを奏でるモーガンもイイが、そのバックで、ぼわぁ~となっている菅のアンサンブルに私は耳が吸い寄せられてしまう。
あとは、モブレイの暖かで「木」を感じるテナーの音色の存在感のほうが、リー・モーガンのトランペットよりも印象深かったりね。
後年は逆転するんだけれども。
モブレイのリーダー作で、おもいっきりリーダーを喰いまくるモーガンまでに成長するからね。
全編、ベニー・ゴルソンのアレンジがゆきわたっているためか、全体的にスタティック。
波茶滅茶でやんちゃなモーガン本来のラッパも抑え気味。
だから印象が薄いのかもしれないね。
しかし、モーガンの成長過程を知るアルバムだと割り切ってきけば、それはそれで収穫がある。
《ファイヴ・スポット・アフター・ダーク》の元になった曲の片鱗も聴けるし、先述したように、モブレイのプレイや、ゴルソンのアレンジの見事さも味わえるから。
皮肉なことに、主役のモーガン以外のエトセトラのほうが際立ってはいるけれども、でも、私、このアルバム、もちろん嫌いじゃないよ。
ジャケットのモーガンのポーズにしびれる。
「小僧がスカしちゃってからに」と思いつつも、ついつい中身の音が気になってしまう、そして、またまた聴いてしまうというわけ。
記:2010/02/28
album data
LEE MORGAN VOL.2 (Blue Note)
- Lee Morgan
1.Whisper Not
2.Latin Hangover
3.His Sister
4.Slightly Hep
5.Where Am I
6.D's Fink
Lee Morgan (tp)
Kenny Rodgers (as)
Hank Mobley (ts)
Horace Silver (p)
Paul Chambers (b)
Charlie Pership (ds)
1956/12/02