リロイ・ウォークス・アゲイン/リロイ・ヴィネガー

   

4ビートのお手本ウォーキング

なぜ、4ビートは、4ビートと呼ばれるのか?

それは、ベースが「4つ」を刻んでいるからだ。

間違った答えではないはずだ。

ベースが1小節に「4つ」を刻む。

絵で言えばデッサン、建築でいえば、骨組みのようなものだ。

色彩にこだわるのも良いが、まずはデッサンがしっかりしていないと、絵としては本末転倒だ。

外観や内装にこだわるのも良いが、土台・骨組みがしっかりしていない建築物は、危なっかしくて住めたものではない。

それぐらい“土台”というものは大事だし、だからこそ、4ビートの土台を築き上げるベースというパートは重要なのだ。

ドラマーはベーシストが刻む「4つ」を聞いて、ハイハットを踏み、シンバルを叩く。

ピアニストやギタリストは、「4つ」の音符を聴いてハーモニーを彩る。

管楽器奏者は「4つ」のナビゲーションで、今現在の演奏の位置確認をし、イマジネーションを働かせる。

ヴォーカルもベースを聴いて歌うべきだということは、映画『ラウンド・ミッドナイト』でも語られていた。

つまり、ベーシストが刻む「4つ」とは、リズムの心臓であり、ハーモニーの根っこであり、演奏の位置を示すナビゲーターでもあるのだ。

良い「4つ」は、良い演奏を生む。

単純だが、それは真理だ。

では、良い「4つ」を刻むベーシストは?

そのひとりとして、リロイ・ヴィネガーが挙がる。

彼の「4つ」は心地よい。

だから、演奏全体も心地よいのだ。

ベーシストが奏でるベースソロのコーナーといえば、低音でモコモコとベーシストがメロディを奏でるものと思われがちだが、彼はそんなことはしない。

自分のソロパートになっても、ひたすら「4つ」を刻む。

“聴ける「4つ」”。

だから、なにも他のベーシストのようにメロディを弾いて主張をする必要などさらさらないのだ。

時として、自分がリーダーのときでさえもベースソロを取らない。

たとえば、このアルバムで言えば《フォー・カール》のような哀切感を湛えた曲は、最後までムードの落差を生じさせないためには“ベースソロはとらない”という判断も、音楽全体を見渡した優れたベーシスト的判断だといえる。

それに、リロイ・ヴィネガーは「4つ」を刻む名手なのだから、無理してベースソロをとる必要すらないのだ。

肉厚で温かい音で「4つ」が刻まれるだけで、人々は幸せになる。

だから、いつもの調子で「4つ」を刻んでくれればいい。

彼はそれを分かっている。

だから、なんの衒いもない『リロイ・ウォークス』や、『リロイ・ウォークス・アゲイン』がいまでも聴き継がれ、「4つ」の大切さを我々に教えてくれるのだ。

記:2007/04/18

album data

LEROY WALKS AGAIN!! (Contemporary)
- Leroy Vinnegar

1.Hard To Find
2.Down Under
3.I'll String Along With You
4.Subway Grate
5.Restin' in Jail
6.Motherland
7.For Carl
8.Wheelin'And Dealin'

Leroy Vinneger (b)
Freddy Hill (tp)
Teddy Edwards (ts)
Victor Feldman (p,vib) #1,3,6
Roy Ayers (vib)
Mike Melvoin (p)
Ron Jefferson (ds)
Milt Turner (ds)

1962/08/01 #1,3,6
1963/03/05 #2,7,8

 - ジャズ