バード・イン・ボストン/チャーリー・パーカー

   

パーカーの18番フレーズをたっぷり味わえる

パーカーは、大音量で聴くと良い。

自宅で大音量が無理ならば、是非、大音量でジャズを流すジャズ喫茶でリクエストしてみよう。

大音量で聴くメリットの1つに、演奏者の細やかなニュアンスがよく分かるということがある。

特にパーカーの場合は、古い録音のものが多いため、どうしても、細かなニュアンスが聴き取りにくい。

しかし、充実したオーディオ装置で大音量で再生されたパーカーを聴くと、ふだん聴きなれているはずのパーカーが、がぜん表情豊かに躍動し始める。

大音量でパーカーを“浴び”て、気付いたことは多々あるが、その中の1つを挙げるとすると、パーカーはブルースは大事に吹くことが多い。

ブルース演奏においては、やたらめったら滅茶苦茶で破壊的なことはしない。

循環モノや、チェロキーのように既存の曲のコード進行を下敷きしたナンバーの演奏だと、かなり凶暴化することもあるが、ブルースの演奏は、比較的、柔らかく丁寧。

もう一つ、大音量で聴いて気付いたことを挙げると、パーカーが必殺フレーズを繰り出すときは、ボリュームが微妙に大きくなるということ。

必殺フレーズって、どいういうフレーズ?

うーん、文字では伝えにくいですね。

面と向かってなら、鼻歌を歌ったりCDをかけながら「ここ!」と指摘できるんだけど。 一応、階名をカタカナで書いてみると、

♪ファ#ソシ♭レファレミ♭ミドド#レドシ♭ラソファ…

です(笑)。

サヴォイ盤でいうと、《ビリーズ・バウンス》のアドリブの9小節目に現れるところ。

《バード・ゲッツ・ザ・ウォーム》の冒頭からいきなり飛び出すフレーズです。

ま、パーカーを聴いている人は、「ああ、あそこか」とピンとくるとは思うんだけれども、分からない人は、文字だけではうまく伝えられん、……ゴメン!

で、この泣く子も黙る必殺フレーズのところだけ、大音量で聴くと音が前に出てくる感じがするんですよ。

しかも、録音状況の違う、様々な音源を大音量でかけても、結果は同じ。

必殺フレーズのところだけ音量が増える。

大音量でかけると、ボリュームの1目盛りぐらいはアップして聴こえるのだ。

きっと、この必殺フレーズを吹くときには「よし出すぞ!」と気合いが入るのだろう。運指や速度を含め、非常に難しいフレーズなので(マクリーンなんかはよくツマる)、パーカーとしても、このフレーズを吹くときは無意識に身体に気合いが入ったに違いない。

フレーズを繰り出すときの確信と意気込みが、音のボリュームとなって現れていた。

これは、大音量でないとなかなか気付けないことだ。

パーカー好きにしてみれば、こういった小さな発見も嬉しいものだ。

この必殺フレーズが聴ければ、もういつの演奏でも、どの曲でも何でもいいや! というのが、私の偽ざる心境。

かなりのパーカー中毒者、か?

フレッシュ・サウンズから出ている、1953年と54年のハイハットでのライブを編集したアルバムは、比較的音も良く、パーカーのアルトサックスが、力強く、クッキリと捉えられている好盤だ。

会場の熱気とともに、必殺フレーズを、グッといきんで繰り出すパーカーがリアルに、そして、骨太に捉えられている。

パーカー入門者にも安心して聴ける内容だ。

記:2007/06/25

album data

BIRD IN BOSTON CHARLIE PARKER LIVE AT THE HI-HAT 1953-54 VOL.1 (FRESH SOUND RECORDS)
- Charly Parker

1.Opening announcement by Symphony Sid and Parker.
2.Cool Blues
3.Scrapple From The Apple
4.Symphony Sid and Bird introduce the members of the band
5.Laura
6.Symphony Sid talks and Bird introduces the next tune
7.Cheryl
8.Ornithology
9.52nd Street and closing announcements
10.Symphony Sid introduces Bird
11.Ornithology
12.Symphony Sid and Bird Introduce the next number
13.My Little Suede Shoes
14.Bird introduces the next tune
15.Now's The Time
16.Groovin' High

Charlie Parker (as)
Herb Pomeroy (tp) #1-9
Herbie Williams (tp) #10-16
Dean Erle (p) #1-9
Rollins Griffith (p) #10-16
Bernie Giggs (b) #1-9
Jimmy Woode (b) #10-16
Bill Graham (ds) #1-9
Marquis Foster (ds) #10-16

1953/06/14 #1-9
1964/01月? #10-16

 - ジャズ