バタフライ/笠井紀美子
2021/02/21
ハンコックのリズムセクションと共演
日本人の女性ヴォーカルがハービー・ハンコックと共演。
そそる企画だ。
ただ、「笠井紀美子 with ハービー・ハンコック」という表記からもわかるとおり、笠井紀美子がハービー・ハンコックのバンドをバックに従えたアルバムというよりは、ハービーのバンドに笠井が客演したといったニュアンスが強い。
笠井の歌唱は、たしかにソウルフルだが、パワフルな歌唱とは言い難い。
どちらかというと、デリケートで線が細い。
同じソウルはソウルでも、アレサ・フランクリンのようなパワフルさよりは、ミニー・リパートンのような繊細さを感じさせるヴォーカルだ。
もっとも、スタティックさを強調したアレンジの《処女航海》や《ハーヴェスト・タイム》においては、そんな彼女の持ち味が生かされ、デリケートなニュアンスがよく出ていると思う。
アップテンポの曲をパワフルに歌うよりも、スローなテンポでじっくりと聞かせる曲が似合うタイプの歌手だと思う。
79年にハービーが来日したときに製作されたアルバムで、《アイ・ソート・イット・ワズ・ユー》や《サンライト》など、ハービーファン、およびヘッドハンターズ・ファンにはおなじみのナンバーが目白押しだ。
さらにスティーヴィー・ワンダーの《アズ》にまでもトライしているのが嬉しい。
ま、難しいことは考えずに、ゴキゲンで楽しいアルバムとして、ドライブやパーティの友にすればいいんじゃないかな。
たしかに笠井のヴォーカルのパンチは弱いかもしれないけれども、やっぱり、一曲目の《アイ・ソート・イット・ワズ・ユー》が流れた瞬間から、私の心はうきうきと楽しく心躍る。
ポール・ジャクソンの太くて安定したベースワークはとても気持ち良いし、ハンコックのヴォコーダーを通したヴォーカルと、笠井のスキャットの応酬もなかなかスリリングだ。
この1曲だけでも、買いのアルバムです。
まったく違う曲として蘇っている《処女航海》に興味のある方も、どうぞ。
記:2005/04/30
album data
BUTTERFLY (Sony Music)
- 笠井紀美子
1.I Thought It Was You
2.Tell Me A Bedtime Story
3.Head In The Clouds
4.Maiden Voyage
5.Harvest Time
6.Sunlight
7.Butterfly
8.As
笠井紀美子 (vo)
Herbie Hancock (key,vo)
Bennie Maupin (sax,bcl)
Ray Obiedo (g)
Webster Lewis (key)
Paul Jackson (b)
Alphonse Mouzon (ds)
Bill Summers (per)
1979/10月