アット・ニューポート/ディジー・ガレスピー

      2021/01/23

エネルギッシュな快演続発

ディジー・ガレスピー楽団は、1956年、アメリカ国務省の文化使節として中近東に派遣され、現地の演奏は大成功をおさめたが、その翌年のニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演した時の模様を収録したのが本アルバムだ。

いわば、ガレスピーの脂の乗っていた時期の様子を捉えたものなので、内容も悪かろうはずがない。

アルバム全体からは、会場の熱気がむんむんと伝わってくる。

派手好き、賑やかなこと大好き、お祭り大好き。
そんな陽気なお祭り男、ディジー・ガレスピーの本領発揮といったところか。

そう、彼の魅力は、なんといってもライブで発揮されるのだ。

直接、オーディエンスに自分の音楽をぶつけ、その場でダイレクトに反応がはねかえってくることに喜びを感じていたに違いない。

最初から最後まで、迫力満点の演奏。狂ったように疾走するビッグバンドのアンサンブルは圧巻だ。

ディジー・ガレスピーといえば、言うまでもなく、ビ・バップを生み出した功労者の一人だ。

ビ・バップ・サウンドの特徴を一言で説明することは難しいが、楽理的な説明を省略して、私流に強引に「サウンドの印象」を要約すると、

・めまぐるしく上下する旋律のうねうね感
・圧倒的なスピード感
・そこから生みだされる、けたたましさ、喧騒感
・凄まじい瞬発力と躍動感

だと思う。

そして、上記のサウンド・キャラクターを、ビッグバンドという大人数編成の楽器群によって「武装強化」すると、スピード感、喧騒感に加えて、エネルギーとサウンドの厚みが増大して、信じられないほどに音のパワーが増すということをまざまざと思い知らされる。

冒頭の《ディジーズ・ブルース》から、大爆発。エネルギッシュな演奏が続く。

荒々しく豪快、メンバーが一丸となって元気な音を放出している。

この作品は、参加メンバーにも注目したい。

このディジーの第三期ビッグバンドのメンバーには、リー・モーガン、ベニー・ゴルソン、ウイントン・ケリーという豪華な顔ぶれを認めることが出来る。
私は、恥かしながらピアノがウイントン・ケリーだったなんて、パーソネルを見るまで気がつかなかった。ケリーにしては、かなり熱く扇情的なバッキングだからだ。

ガレスピーがソロを取る《アイ・リメンバー・クリフォード》も良いが、トランペットのソロで特筆すべきは、《マンテカ》や《チュニジアの夜》においてのリー・モーガンのソロだと思う。

本家本元の親分を喰ってるんじゃないか思うほどの熱くヒートした演奏だ。

ゲストで参加している、メアリー・ルー・ウイリアムスのピアノもなかなか。

彼女は、日本ではあまり知られてはいないかもしれないが、本場ではかなりの実力者として認知されているピアニストだ。

私は彼女の男勝りの力強いタッチと、重厚な和音が結構好きだ。

ビッグバンドの圧倒的なサウンドも良いが、ガレスピーのMCや、しゃがれた声でのヴォーカルも楽しい。

迫力あるサウンドに、楽しいステージング。会場にいたオーディエンスは、最初から最後まで楽しみっぱなしだったのだろう。うらやましい。

記:2002/03/20

album data

DIZZY GILLISPIE AT NEWPORT (Prestige)
- Dizzy Gillespie

1.Dizzy's Blues
2.School Days
3.Doodlin'
4.Manteca Theme
5.I Remember Clifford
6.Cool Breeze
7.Zodiac Suite-Virgo,Libra,Aries
8.Carioca
9.A Night In Tunisia

Dizzy Gillespie (tp,vo)
Lee Morgan,Emit Perry,Carl Warwick,Talib Daawud (tp)
Melba Liston,Al Grey,Chuck Connors (tb)
Ernie Henry,Jimmy Powell (as)
Billy Metchell,Benny Golson (ts)
Paul West (bs)
Wynton Kelly (p)
Paul West (b)
Charlie Persip (ds)

1957/07/06

 - ジャズ