フロム・ミー・トゥ・ミー/南博 GO THERE!

   

爽やかな触感

南博のレギュラーカルテット"GO THERE!"、3枚目のアルバムで、前作の『Celestial Inside』からは、およそ7年ぶりのリリースとなる。

メンバーは、リーダーでピアストの南博を筆頭に、サックス(テナー、ソプラノなど)に竹野昌邦、ベースは、津上研太が率いるユニット「BOZO」の盟友でもある水谷浩章で、ドラマーは芳垣安洋という編成だ。

全編アコースティック楽器で、4ビート中心のリズムで奏でられているにもかかわらず、音の心地よさは、爽やかなフュージョンの触感に近く、爽快な気分で心地よく聴けるという点においては、語弊があるかもしれないが「フュージョン4ビート」というニュアンスが個人的にはしっくりとくる。

このような肌触りは、演奏そのものよりも、全曲、南自身が書き下ろしたオリジナル曲のメロディが大きな要因なのかもしれない。

『フロム・ミー・トゥ・ミー』に収録されている多くの楽曲は、まるで純度の高い水が勢いよく流れてゆくような澄んだメロディが特徴だ。

懐かしい旋律

《シー・アンド・オーシャン》に代表されるメロディアスなナンバーの数々。

ときに純朴で、ときに懐かしさも感じさせる甘酸っぱさをもたたえたナンバーの連続で、これらの曲を書き下ろした南博というピアニストは、その風貌からは想像もつかないほど(失礼!)、無垢な少年の心をいつまでも持ち続けている表現者なのではないかと感じる。

しかし、ここからがポイントなのだが、単に純粋でみずみずしいというだけではない。甘いようでいて、大甘なわけでは決してない。

適度にビターな要素も注入されている点にも注目。

つまり、純度100%の子供のようなピュアさではなく、酸いも甘いも噛み分けてきた大人のみが出せるピュアさ。少年の心に戻ることが出来る、人生経験をそれなりに経てきた大人のみが無垢に還れる境地なのだ。

そして、これら楽曲の世界観をレギュラーカルテットが手堅い演奏で具現化しているのだ。

演奏力もたしかなメンバーたちゆえ、音にはまったく隙も粗も無く、安心して何度も繰り返し聴けるのがこのアルバムのいいところなのだ。

アウトドアで聴くと良い

ちなみに私は、このアルバムが発売された昨年(2010)年の夏から、このアルバムの音源はiPodの中に入れっぱなしで、ことあるごとに、新宿や渋谷の街を徘徊しながら聴いている。

私はすぐにiPodの中の音源を消してしまう性質なので、半年以上生き残り続けている『フロム・ミー・トゥ・ミー』は、なかなか飽きない、いや飽きさせてくれない何かが音の中に宿っているのかもしれない。

記:2011/03/11

album data

FROM ME TO ME (Airplane)
- 南博(Minami Hiroshi GO There!)

1.Barack Obama
2.Sea And The Ocean
3.December, December
4.Window In The Sky
5.SAKURA -cherry blossom-
6.Angie Dickinson
7.Tears
8.Falling Falling Petals
9.Praise Song

南博 (p)
竹野昌邦 (sax)
水谷浩章 (b)
芳垣安洋 (ds)

2010/03/16-17

 - ジャズ