イン・ン・アウト/ジョー・ヘンダーソン
2021/02/05
パワフルなジョーヘン、轟くテナー
秀逸なタイポグラフィのジャケットとともに、ハードかつアグレッシヴなヘンダーソンを聴ける1枚だ。
一時期はコルトレーンの後継者と目された彼だが、逆にこのアルバムの演奏を聴けば、コルトレーンとは似て非なる彼の特質を知ることが出来ると思う。
リズムセクションがコルトレーン・カルテットのマッコイ・タイナー(p)に、エルヴィン・ジョーンズ(ds)。
ベースだけはジミー・ギャリソンではなくリチャード・デイヴィスだが、彼もギャリソンと並ぶ重量級ベーシスト。
つまり、バックのリズム陣は限りなくコルトレーン・カルテットに近い陣営。だからこそ、コルトレーンとジョーヘンの違いが浮き彫りになる。
どんなに速いテンポでも、一音一音の輪郭が比較的ハッキリとしたコルトレーンのテナーに対し、ジョーヘンのテナーは、もう少しくすんだ音色で音の輪郭もダークで曇っている。
悪く言えば、モゴモゴ、ホゲホゲしたテナーかもしれないが、この「モゴホゲ」が、ヘンダーソン中毒者にとっては、たまらぬ味わいなのだ。
激しい演奏になっても、リズムへのノリはイーブンで正確なコルトレーンに比べ、ヘンダーソンの場合は直線の時間軸にトグロを巻くように不気味に蠢く。
両者ともハードでアグレッシヴな演奏を得意とするサックス奏者だが、アプローチの発想がかなり異なっていることが分かる。
ダークな凄みをみせるジョーヘンを聴くにはもってこいの演奏が集結したのが、この『イン・ン・アウト』だ。
特に、圧倒的な馬力を誇るリズムセクションをエネルギー源に、力強く中空をさまよいまくるヘンダーソンのプレイが圧巻だ。
ヘンダーソンを可愛がっていた先輩のケニー・ドーハムによるトランペットプレイは、あくまでマイペースなところがイイ味を出し、張り切る後輩を上手に引き立てているところが良い。
特に、ドーハムのオリジナルで味わい深い名曲《ショート・ストーリー》。センチメンタルさを感じさせすぎない師弟コンビによるテーマの合奏は乾いた哀愁をピリリと醸し出している。
記:2009/06/09
album data
IN'N OUT (Blue Note)
- Joe Henderson
1.In 'N Out
2.Punjab
3.Serenity
4.Short Story
5.Brown's Town
Joe Henderson(ts)
Kenny Dorham(tp)
McCoy Tyner(p)
Richard Davis(b)
Elvin Jones(ds)
1964/04/10