ステイ・ルース/ジミー・スミス

   

年代物のR&B風B級ジャケット

うぉっ! なんなんだ、このジャケットは!?

ディスク・ユニオンの店頭でこのアルバムを手にした際は、一瞬、年代モノのB級ファンク・グループのアルバムとカンチガイし、ディスクユニオンさん、置き場所間違えたかな?と思ったものですが、よく見ると、ジミー・スミスのアルバムじゃないですか。

最初にこのジャケットに遭遇したときの驚きと、のけぞり具合は、カーティスカウンスの『エクスプローリング・ザ・フューチャー』と出会ったときに匹敵するものがありましたね。

EXPLORING THE FUTURE  エクスプローリング・ザ・フューチャ
EXPLORING THE FUTURE エクスプローリング・ザ・フューチャー

たとえば、ジミー・スミスの初期のアルバム、そう、ブルーノートの『ア・ニュー・サウンド・ア・ニュー・スター・ジミー・スミス・アット・ジ・オーガン Vol.1』や、『ザ・チャンプ』などに親しんでいる「バップの香りを好むマジメなオルガンジャズファン」にとっては、このオフザケチックなアルバムジャケットを見ただけでも顔をしかめてしまうかもしれませんね。

時代は「宇宙」

このアルバムが録音されたのは1968年。

おっ、俺の生まれた年じゃん(笑)。

日本では三億円事件のあった年、そして世界では宇宙に目が向けられ、米ソ両陣営が、躍起になって宇宙開発技術を競っていた時代でもあります。

このような時代背景があってのジャケットなのかもしれませんね。

ルー・ドナルドソンも、ソ連の「スプートニク1号」の打ち上げに触発されて『ルー・テイクス・オフ』というアルバムをブルーノートに吹き込んでいるので、宇宙開発に関心のあるジャズマンも少なくなかったのでしょう。

今見ると、もうB級もB級、いや、C級をさらに飛び越えて、究極のZ級と言っても良いぐらい、ゼットでゼータな、もしかしたら、それにさらに輪をかけてダブルゼータなセンスなのかもしれないけれども、発売された当初は、ナウでめちゃイケな感じだったのかな?

それとも、カーティス・カウンスにしろ、ジミー・スミスにしろ、ジャズマンの間では、宇宙飛行士のコスプレが流行っていたとか?

でも、内容は、ジャケットのような「おふざけ」は感じられないですね。

人選も、テナーサックスがスタンリー・タレンタイン、ベースがジミー・メリットと、ストレート・アヘッドなジャズも演奏できるパーソネルが中心だし、特に、企画モノ特有のアザとさのようなものは感じられません。

スタンリー・タレンタインが参加!

では、このアルバムでのジミー・スミスは?

ジミー・スミスが唄っているナンバーもあったり、初期のジミー・スミスの演奏に比べれば、かなりソウルフルに変貌しているということはあるのですが、基本的には、ジミー・スミスを聴きなれた耳には、心地よく染み渡ってくるノリの良いオルガン・ジャズです。

ノリが良いというのは控えめな表現か。
ノリノリ、ゴキゲンと表現したほうが適切でしょうね。

このノリノリ&ゴキゲンなテイストは、やはり、ソウル濃度のクオリティが高いのは、スタンリー・タレンタイン効果が高いのかもしれませんね。

このアルバムを吹き込む前より、『ミッドナイト・スペシャル』などでも共演のあったジミー・スミスとタレンタインですが、より一層、緊密度が増し、濃厚なソウル臭を放つようになってきています。

演奏内容は悪くないし、21世紀の今となっては、こういうジャケットのビジュアルもかえって新鮮に映る若い世代もいるはず。

怖くないので(笑)、臆せず手を伸ばして聴くべし!

記:2015/07/05

album data

STAY LOOSE (Verve)
- Jimmy Smith

1.I'm Gonna Move to the Outskirts of Town
2.Stay Loose
3.If You Ain't Got It
4.One for Members

Jimmy Smith (org)
Stanley Turrentine (ts)
Phil Upchurch (g)
Jimmy Merritt (b)
Grady Tate (ds)

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>>ミッドナイト・スペシャル/ジミー・スミス

 - ジャズ