ルイ・アームストロング全集~この素晴らしき世界~

   

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text:高良俊礼(Sounds Pal)

ジャズ 巨人

ジャズを聴いていると、そのうちに「必ず行き当たる大物」に出会う。

特にマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン等のモダン・ジャズ以降のアーティストから聴き出すと、その前の時代の巨人達の音源のほとんどはさかのぼって聴くことになる。

大体は好きなジャズマン達のルーツとして彼らのことを知り、最初は古い音質やスタイルに戸惑いを感じながらも、何度も繰り返し聴いているうちにジワジワと少しづつ、その良さが分かって来ると同時に、好きなアーティストが影響された部分を通じて、時代状況から如何に彼らが音楽的に素晴らしい業績を残したか、などということまで何となく理解できるようになる。
ルイ・アームストロング
歴史に巨大な名を刻む「大物」達の演奏を楽しむことと、段階的に深まる理解は欠かせないが、巨人にも例外はいる。

ジャズ誕生の街ニューオリンズで生まれ、戦前戦後を通じてジャズの歴史そのものを生きてきたルイ・アームストロングは、そのデビューを、コルネット(トランペットの前身楽器)を自在に操る華麗なソロで飾り、ジャズの重要な要素である「ソロ、アドリブ」の価値を不動のものにした。

独特のしわがれ声を、まるで楽器のように巧みに操ってて「シャバダバウバダバ」とゴキゲンに聴かせるスキャット唱法をポピュラーなものにしたのもルイだ。

ルイ・アームストロング ポップス

他にも彼が残した音楽的な業績は計り知れないものがあるが、そういう諸々を把握した上でCDやレコードを聴いても、ルイの音楽は敷居の高さを全く感じさせない。例えば歌い出しをサッと聴くだけで「いいなあ」と感動を覚え、また不覚にも涙腺が緩んでしまう。

ジャズに対するそれなりの知識があればルイの音楽を深く楽しむことは出来るが、ジャズに対する知識などまるでなくても、彼の音楽に深く感動することは出来る。

だからルイ・アームストロングという人は、ポップスとしても誰からも愛され、今でも多くの人に聴かれ続けているのかも知れない。代表曲の《この素晴らしき世界》、《キャバレー》、《聖者の行進》などは、いずれも心温まる名曲であり、いずれも深い。

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●高良俊礼(奄美のCD屋サウンズパル

※『南海日日新聞』2008年4月20日「見て、聴いて、音楽」記事を加筆修正

記:2014/08/09

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