ミンガスの『直立猿人』はB面が最高なのだ。
2021/02/11
後半の2曲が良い
チャールス・ミンガスの代表作の1枚といわれている『直立猿人』。
購入してから、ほぼ20年の歳月が経った。
この20年の間、B面ばかり聴いているような気がする。
あまりA面は聴いていない。
もっとも、私が持っているのはCDだから、「A面」「B面」という言い方はないのだろうけれど。
CDでいうと、全4曲中、後半の3曲目と4曲目です。
《ジャッキーの肖像》と《ラヴ・チャント》の2曲ね。
ミンガスの代表作にして問題作の《直立猿人》。
これだけを聴いて、へヴィ、クドい、長いと感じた人もいるかもしれない。
しかし、ここで聴くのを諦めたら、勿体無い。
迷わず曲をスキップして、《ジャッキーの肖像》や、《ラヴ・チャント》を聴いてみましょう。
ラストはまさにミンガス・ミュージック
《ジャッキーの肖像》は、文字通り、ジャッキー・マクリーンの哀切感たっぷりのアルトサックスのプレイが、気だるいムードを増幅してくれる。
そして、ラストの《ラヴ・チャント》は、メランコリックながらも、どこか不穏でホコリっぽいサウンドは、これまさに「ミンガス・ミュージック」。
執拗に繰り返されるマル・ウォルドロンのピアノに、重くウネるベースが良いですね。
メリハリのある展開。
ドラムではなく、タンバリンの連打がこの曲の雰囲気にこそ相応しい。
長めの演奏だが、まったく飽きることなく、ミンガス流のメランコリックさと、マクリーン流の哀感がバランス良くミックスされた特殊な空気にひたることが出来る。
このようなムードをもった曲は、他のミンガスの作品、演奏は数あれど、『直立猿人』のB面の2曲のみでしょう。
もっと戦闘的だったり、もっと重かったり、もっとメランコリックだったり。
ミンガスという人は、けっこう、トゥーマッチな表現をする人なので、メランコリックさと重たさが丁度良い按配でブレンドされており、なおかつ、じっくりと鑑賞することが出来る温度とムードを持っているのが、私にとっては《ジャッキー~》と《ラヴ・チャント》の2曲なんですね。
だからこそ、かれこれ20年近くもの間、『直立猿人』というアルバムは埃をかぶることなく、定期的にわが家で鳴り続けているのかもしれない。
記:2010/01/12
album data
PITHECANTHROPUS ERECTUS(直立猿人) (Atlantic)
- Charles Mingus
1.Pithecanthropus Erectus
2.A Foggy Day
3.Profile Of Jackie
4.Love Chant
Charles Mingus (b)
Jackie McLean (as)
J.R. Monterose (ts)
Mal Wardron (p)
Willie Jones (ds)
1956/01/30