ウィル/川嶋みき

   

川島だりあ←川嶋みき

川嶋みきという歌手をご存知だろうか?
現在は名前を変えて活動しているので、「川島だりあ」と言ったほうが通りが良いかもしれない。

1987年に第13代クラリオンガールに選出され、歌手デビュー。
しかし、残念なことに、ヒット曲に恵まれず、知名度はそれほど高くない不遇といっても過言ではない歌手だった。

私は、川嶋みき時代の2枚目のアルバム『ウィル』のサウンドが好きなので、いまでも時折聴いている。

軽やか爽やかな2nd

正直、ファーストアルバムの『スプラッシュ』に関しては、あまり好きではなかった。

デジタルシンセの使い方が、いかにもMIDI、デジタルシンセ登場以降の80年代から90年にかけても、悪しきコマーシャリズムのようなものが露骨に出過ぎているようなアレンジとサウンドが好みではなかったし、なにより、彼女の声と溶け合っていないと感じたからだ。

とはいえ、川嶋みきを熱烈に支持するファンの友人から、2枚目も買ってよ、聴いてみてよと強く勧められたので、発売日に秋葉原の石丸電気でCDを買った。

ボーリングかピザの大食い競争のどちらかで負けたため、私が買うことになってしまったのだ。

発売日にもかかわらず、店頭では目立つところにはなく、五十音順の「か行」の歌手のコーナーに2枚ほどしか陳列されていなかったのが、当時の川島みきの知名度を物語っているようだった。

あまり期待をせずに聞いてみると、1枚目の安っぽいサウンドとは打って変わって、清涼感溢れる爽やかなサウンドとアレンジに身を乗り出した。

川嶋みきの声質は、伸びやかで透明感あふれる高音に特徴があるのだが、まさに彼女のクリアでまじりっけのない声にマッチしたサウンドだと感じた。

1曲目の元気あふれる《リアル・タイム》から、前作のある種歯切れの悪いサウンドからは一皮もふた皮も向けた軽やかさ漂い、気づけば最後まで一気に聴き通している自分がいた。

よく聴くと、ドラムの音も抜けの良い音で録音されている。
また、効果的にヴォーカルにディレイをかける箇所があったりと、録音とミキシングのすばらしさにも舌を巻いた。
特に、1曲目の《リアル・タイム》や3曲目の《モーニング・サイド》にこれが顕著だった。

秀逸なラスト2曲

そしてラスト。

メドレー形式になっている《さよならの街に舞い降りて》と《シンデレラたちの憂鬱》の2曲がハートにトドメを刺してこのアルバムは終了する。

当時オンエアされていたドラマ『27才・LOVE気分』にも使用された《シンデレラたちの憂鬱》は、麻生圭子の作詞によるもの。

いま聴いても良い曲だと思う。

ベタで、「80年代的トレンディ恋愛世界観」が凝縮されたかのような歌詞と曲調だが、これ、ほんと名曲だと思う。

曲調と川嶋みきの声質もピタリとマッチしているし、なにより先述したように、高音部の声の透明感あふれる伸びが本当に素敵。

私はドラマのほうは見ていなかったが、当時このドラマを見ていた人が聞けば、涙腺がウルウルなのではないだろうか?

また、このナンバーの前奏曲ともいえる《さよならの町に舞い降りて》も良い。

個人的にはアルバム中では、この曲が一番好きなんだけれども、当時「ボーヤ」だった私が勝手に思い浮かんでいた「大人の切ない恋愛」イメージが具現化したような曲調だった。

そして、この曲に出会う少し前に読んでいた林真理子の『最終便に間に合えば』を思い出してしまった。

すべての曲とはいえないが、良い曲が多かっため、この『Will』というアルバムは、もっと多くの人に聞いて欲しいと心底思ったものだ。

ライブにも行ったよ

そして、もちろんこのCDの発売記念ライブにも行ってきましたよ。

たしか信濃町か千駄ヶ谷のホールだった記憶があるんだけれども、会場名は忘れてしまった。

ただ、比較的広めなホールの中、会場の客席のお客さんはまばらで、おそらく5分の1も埋まっていなかったんじゃないだろうか。

よって、私とファンの友人は前から3番目くらいの列でステージを拝むことが出来た。

しかし、客の入りの少なさもなんのその、パワフルに熱唱する川嶋みきさんの姿に、プロの根性を見た。

頭からペットボトルにはいった水をぶちまけ、とにかく今持っているエネルギーの100パーセントを出し切ろうとする姿はまぶたに焼き付いている。

ロックな蓮舫?

川嶋みきという名前をはじめて知った方は、これを機会に《シンデレラたちの憂鬱》だけでも聴いてくだせぇ、YouTubeにも動画がアップされて……、と書きかけて、実際YouTubeで検索をかけてみたら、あったあった。
ただ、個人的にはあまり見てほしくないかもしれない。

曲のオイシイところがカットされている上に、曲調とビジュアルが一致していないのだ。

せっかくの名曲なのに、若いころの蓮舫議員がロックな出で立ちで歌っているかのような違和感がある(笑)。
(そういえば蓮舫もクラリオンガールだったし、そういえば、短髪が似合うお二人のイメージはかなり似ている)

川嶋みきは、好きなミュージシャンにアイアン・メイデンを挙げていたことからも、昔からハードロックが好きだったようだ。

だから、あのようなロックな格好をするのもわからないでもないけれども、なにしろ曲のイメージとロッケンロールなファッションとのギャップがすごく、この曲はできれば音だけで聴いて欲しいな、と思った次第。

なるほど、彼女は歌唱力があるにもかかわらず、知名度がなかった原因は、売り出し方にあったのかもしれない。
あきらかに音楽とビジュアルイメージが乖離しているのだ。

菊地桃子が一時ロックバンド結成した
⇨ラ・ムー
⇨愛は心の仕事です
⇒多くのファン、口あんぐリ……
⇨ろ、ロックっすかぁ?
(・Д・)

……というようなことに似ているのかもしれない。

できれば、音質の良いCDで聴いて欲しいなと思っている次第であります。

記:2017/04/24

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