マイルス・イン・ザ・スカイ/マイルス・デイヴィス


Miles in the Sky

ベンソン参加

1曲目の《スタッフ》。

淡々とした肌触り。

平板な8ビート。

エレキベースで簡素なリフを反復するロン・カーター。

ダイナミクスを押し殺したかのようなリズム刻むトニー・ウイリアムス。

リズムの上を漂うように、とりとめも無く、つかみどころの無いテーマが執拗に繰り返される。

決して音楽のほうからこちらに歩み寄ってくることがない。

ある種、無愛想な肌触り。

テーマの旋律には“ストーリー”的な起伏、いわば起承転結のようなものが無い。

しかも、このテーマの繰り返しが、5分以上も続く。

その間、演奏のテンションはクールに抑制されたままだ。

いつしか、肩透かしを食らったような、不安定な気分になる。

最初はよそよそしさを感じるかもしれない。

じわじわと少しずつ染みてくるタイプの演奏だ。

抑制を効かせた単調な繰り返しによって、聴き手は軽い夢遊状態に誘われる。

「8ビートを導入したマイルスの意欲作」。

『マイルス・イン・ザ・スカイ』は、そう語られることが多い。

たしかに、そのとおり。

しかし、重要なことは、8ビートはあくまで結果論。

8ビートのために8ビートを導入したわけではない。

8ビートの導入は、あくまで結果論だ。

マイルスの音楽的な意図は、もう少し深いところにある。

すなわち、アドリブの旋律以上に、音色とリズムをも含めたトータルなサウンドの“雰囲気”で、今までに無い音空間を構築しようとする試み。

結果的に、最適なリズムが8ビートだった、ということなのではないだろうか。

ジョージ・ベンソン参加も、このアルバムを語る上でのトピックスとしては欠かせない。

もっとも、参加はしてはいるが、参加している以上の何かは無い。

参加曲は、2曲目のみだが、彼のプレイは、いまいち、演奏の向かう方向や、コンセプトを理解しきれていない感じがする。

手がかりを求めて、手探りでギターを弾いているように聞こえるのだ。

「あの~、親分、こんな感じで良いんでしょうかねぇ?」と、冷や汗タラタラなベンソンの声が聞こえてきそうなギターではある。

この後、マイルスはベンソンを雇わなかった。

この事実が、この演奏の出来を証明しているといってもよい。

いずれにせよ、『マイルス・イン・ザ・スカイ』は、良くも悪くも過渡期的作品だと思う。

試行錯誤を繰り返すマイルスの実験過程の中間発表。

それ以上のものは感じないし、それ以下のものも私は感じない。

面白かったり、興奮状態に陥る類の音楽、ではないなぁ。

記:2009/03/01

album data

MILES IN THE SKY (Columbia)
– Miles Davis

1.Stuff
2.Paraphernalia
3.Black Comedy
4.Country Son

Miles Davis (tp)
Wayne Shorter (ts)
George Benson (g) #2
Herbie Hancock (p,el-p)
Ron Carter (b,el-b)
Tony Williams (ds)

1968/01/16(NYC) #2
1968/05/15-17(NYC) #1,3,4

ジャズ

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