タウン・ホール・コンサート/チャールス・ミンガス
異常に高いテンションと集中力
ミンガスのアルバムの中では、これが一番の愛聴盤だ。
もっと言ってしまえば、『タウンホール・コンサート』というアルバムというよりも、《ソー・ロング・エリック》こそが、ミンガスの作品の中では、最も愛聴している曲なのかもしれない。
なんてスケールの大きい演奏、アンサンブル、アレンジなんだろう。
ミンガスの持つ世界観、音楽観、美意識、ユーモア、アイディアなどが《ソー・ロング・エリック》の一曲に凝縮されているといっても過言ではないぐらいだ。
妖しい光彩を放つジョニー・コールズのトランペット。
野太いサウンドで“オイシイ味”を惜しみなく提供する、クリフォード・ジョーダンのテナーサックス。
エリック・ドルフィーの、ウネりまくる、エキサイティングでスリル満点のプレイ。
なんでもござれの器用さと、重厚さとダイナミックさをも併せ持つジャッキー・バイアードのピアノ。
ミンガスのベースにピタッと寄り添う、ミンガスの第二の手足、ダニー・リッチモンド。
私は、彼らこそがミンガスにとってのベスト・メンバーなんじゃないかと思っている。
もっとも、彼ら各々が持つ個性は、かなり強烈でアクが強い。
しかし、彼ら、アクの強いプレイヤーの異なる個性を殺すことなく、一つのアンサンブルの中に溶け込ませているミンガスの手腕、リーダーシップはさすが。
なんの変哲もないブルースを、単なるジャムセッションとは一線もニ線も画する、聴き手を一瞬足りとも飽きさせない仕掛けと、局面の変化の連続にワクワクする。
イントロで、ミンガスが奏でるベースソロは、これから始まる演奏への期待感をたっぷりと高めてくれるし、たった3本の管楽器にもかかわらず、まるでビッグバンドなみの迫力と重厚さを醸しだすテーマも涙もの。
壮大、スケールでかし。
分厚く、迫力と期待感満点。
この《ソー・ロング・エリック》は、64年の3月に新たに結成されたミンガス・グループが、ヨーロッパツアーに旅立つ直前に、タウンホールで演奏されたもの。
NAACPという、黒人の社会的地位の向上をめざす団体主催の基金募集コンサートだ。
収録された2曲ともに、ヨーロッパでのライブでは何度も演奏されているし、そのときの模様の貴重な映像も出回っているが、やはり、私は結成最初期の段階に演奏されたテンションと集中力が異様に高い、このアルバムの演奏が一番好きだ。
記:2003/06/12
album data
TOWN HALL CONCERT (Jazz Workshop)
- Charles Mingus
1.So Long Eric
2.Praying With Eric
Charles Mingus (b)
Johny Coles(tp)
Eric Dolphy(as,bcl,fl)
Clifford Jordan(ts)
Jaki Byard (p)
Dannie Richmond (ds)
1964/04/04